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渋谷を中心に活躍する【キーパーソン】のロングインタビュー。彼らの言葉を通じて「渋谷の魅力」を発信します。

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秋好陽介さん
(ランサーズ株式会社代表取締役社長)

フリーランサーとの親和性が高い渋谷に拠点を移し、「クラウドソーシング」で日本人の働き方を変革する

プロフィール

1981年生まれ。大阪府出身。2005年、ニフティ株式会社に入社し、プロデューサーとしてホームページなどの企画・運営を担当。2008年、株式会社リート(現ランサーズ株式会社)を設立した。「時間と場所にとらわれない新しい働き方の創出」を経営理念として、国内最大手のクラウドソーシングサービス「Lancers(ランサーズ)」を運営。2013年6月、鎌倉から渋谷へ本社を移転したばかり。

新たな働き方として注目されているクラウドソーシング。インターネットを介して、クライアントがフリーランサーに仕事を直接委託するクラウドソーシングというサービスを、日本で初めて事業化したのがランサーズです。これまでは鎌倉を拠点としていましたが、2013年6月、さらなる成長を求めて渋谷の地に移転してきました。クラウドソーシングは日本人の働き方をどのように変える可能性を秘めているのでしょうか、ランサーズ代表の秋好陽介さんにお話をうかがいました。

実際に会わなくても、「信頼関係」をつくり出すしくみ

_最初に「クラウドソーシング」についてご説明をお願いします。

クラウドソーシングとは、“crowd(群衆)”と“sourcing(業務委託)”を合わせた造語です。ネットの特性を生かして、群集、すなわち不特定多数の人びとに対して業務を委託するサービスが、クラウドソーシングです。そういうサービスは、これまでにもあったのでは、と思われる方もいるかもしれません。確かに、様々な職業のマッチング・サイトが存在します。しかし、従来のマッチング・サイトのサービスは、委託者と利用者を結び付ける機会を提供するのが目的で、その後は両者がお互いの責任で仕事を進めるというのが基本的な形でした。それに対してクラウドソーシングは、マッチングだけではなく、契約や納品、決済といったすべての流れがネット上で完結するのが大きな特徴です。簡単に当社の業務委託の仕組みをご紹介しましょう。当社では、仕事を受注する個人を「ランサー」と呼びます。ランサーは仕事を積み重ねることで実績や評価が蓄積されて表示されるため、委託企業は、仕事内容によって適当なランサーを容易に見つけられます。また、当社では事前に委託者から各仕事の報酬をお預かりし、契約完了後にランサーに対してお支払いするという形をとっています。この仕組みにより不払いなどのトラブルを未然に防ぎ、ランサーは安心して仕事を受けることが出来ます。このように委託者とランサーが実際に会わなくても、仕事を進める上で最も重要なベースである「信頼関係」をつくり出せることが、クラウドソーシングの画期的な点です。

_クラウドソーシングの世界的な動向について教えてください。

当社が日本で初めてクラウドソーシングを事業化したのは2008年です。とはいえ現状でも、国内におけるクラウドソーシングの認知度は高いとはいえません。これはまだ、フリーランスという働き方が一般化されていないからだと考えています。一方、日本の5年先を走っているといわれるアメリカでは、2000年頃にクラウドソーシングがスタートし、今ではフリーランスとして働く人は日本の20〜40倍に上ります。中国でもクラウドソーシングは盛んで、登録者数が世界最大手のクラウドソーシングサービス「猪八戒(ちょはっかい)」の登録者数は760万人に上ります。今後、日本でも、フリーランスという働き方を選ぶ人は増え、それに伴いクラウドソーシングの市場も拡大していくと見通されています。

_ランサーズ設立の経緯をお聞かせください。

大学時代から個人事業主としてインターネット関連のビジネスをしていました。でも、「井の中の蛙にはなりたくない」という思いがあり、卒業後、一旦は都内でニフティ株式会社に新卒入社し、プロデューサーとしてWEBサイトの制作などを担当していました。このときの経験が、ランサーズ設立のアイデアとなっています。当時、フリーランスの人たちに制作の仕事を依頼すると、大手企業に優るとも劣らない品質とスピードで仕上げてもらえることがありました。しかし、フリーランスは企業に比べて信用力が劣り、発注するのはリスキーという考え方も根強く残っていました。実際には優秀なフリーランスはとても多いので、彼らにとっても大きな機会損失といえます。そこで、企業とフリーランスの人びとを結び付ける場を自分で作ったらどうだろうと思い立ったのです。こうした仕組みがあれば、企業はコストで抑えて発注できるし、またフリーランスの人びともインターネット環境さえあれば、住む場所にとらわれずに生きていくことが可能ではないかと。さらには出産を機に退社した女性や、定年を迎えたシニアなど、潜在的な労働力を顕在化させることが出来るという思いもありました。調べるうちに、こうしたサービスが「クラウドソーシング」と呼ばれ、アメリカなどで存在することも知りました。日本とアメリカでは労働事情が大きく異なるため、海外の事例を参考にしながら、当社独自のサービスを組み立てていきました。

クラウドソーシングが新たな仕事を生み出せる理由

_ランサーズという社名の由来をお聞かせください。

フリーランスを支援するという思いを込めた社名です。フリーランス(フリーランサー)の語源はご存じでしょうか。もともと「ランス」は、「槍」という意味です。中世ヨーロッパでは、戦争が起こると傭兵が雇われました。傭兵は人数ではなく、槍の本数でカウントされました。そのため、傭兵は「フリーランサー」と呼ばれるようになったのです。それが近世以降は、組織に属さずに自由な立場で働く人を指すようになりました。弊社の全身鎧に身を包んだシンボルマークは、語源であるランサーを意味しています。

_設立から現在に至るまで、どのようなご苦労がありましたか。

設立当初は、社会全体に「フリーランサーに仕事を任せる」という発想があまりなかったため、企業からの委託を集めるのに非常に苦労しました。委託がなければ、当然ランサーも集まりません。初めの2年間は、徹底した低コスト経営によって何とか生き延びたという、我慢の時期でした。流れが変わり、当社への人びとの関心が高まったきっかけが、2011年の東日本大震災でした。在宅勤務が見直されるなど、働き方に対する意識が大きく変化したことが背景にあります。大震災以後、企業からの委託は増加の一途をたどり、それに伴って登録者数も伸びました。現在の登録者数は14万人。登録者は20〜30歳代が多いですが、シニアが少ないわけではありません。全登録者の売上トップ3のうち、2人は60歳代です。また7割が地方都市に住んでおり、海外から当社サイトにアクセスして仕事をしている登録者も約2,000人います。

_同業他社も現れていますが、ランサーズの強みはどのような点でしょうか。

いかにランサーにとって価値のあるサービスを提供するかという考え方を、すべての意思決定の方針としていることが、各種サービスに色濃く表れていると思います。ランサーにとって価値がないと判断すれば、委託をお断りすることもあります。また、日本で初めてクラウドソーシングを事業化したことで、ナレッジの蓄積などの先行者優位性があると考えています。今後は、教育支援にも力を入れていく考えです。現在のクラウドソーシングは、比較的能力の高いフリーランサーが仕事をしているケースが多いです。その状況を崩し、徐々にステップアップし、全く未経験の職種にチャレンジできる支援制度を設けることを検討しています。

_クラウドソーシングの広がりにより、制作物の「価格破壊が起きる」という指摘もありますが、どのようにお考えでしょうか。

確かに、競争原理が働くことによって制作物の単価が低下する傾向はあると思います。しかし、それはクラウドソーシングによる効率化で各種経費が抑えられているという面が強くあります。例えば、これまで制作費50万円でロゴマークを制作する場合、30万円は中間マージンなどの経費となり、20万円が制作者に入っていたとします。それがクラウドソーシングを介して直接制作者に委託されるのであれば、中間マージンのみがなくなり、制作費は今までの20万円のままという考え方もできます。さらに視点を変えれば、費用が抑えられるため、外注される仕事が増えるメリットがあります。例えば、草野球チームのロゴマーク制作という仕事が委託されたことがありました。以前は、監督が自分でつくっていたそうです。これなどはコストが抑えられたクラウドソーシングによって、新たに生み出された仕事といえるでしょう。

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