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KEY PERSON キーパーソンが語る渋谷の未来

渋谷を中心に活躍する【キーパーソン】のロングインタビュー。彼らの言葉を通じて「渋谷の魅力」を発信します。

プロフィール

1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。1984年伊藤忠ファッションシステムに入社。ファッションという視点から消費者や市場の動向を分析する会員制クラブ組織「マーケティングアイ」で、アパレルや化粧品、流通、インテリアなど、会員企業とのネットワークを生かしてレポートの編集やセミナーの企画運営を行う。2007年6月、渋谷のパルコ、原宿のラフォーレを中心にトレンドを創ってきた人々の軌跡を追った「TOKYOファッションビル」(日本経済新聞社)を上梓。その他の著書に「おしゃれ消費ターゲット」(幻冬舎)、「TOKYO消費トレンド」(PHP)など多数。

人と街を巻き込んだのが渋谷パルコの勝因

--渋谷パルコやSHIBUYA109など、渋谷のファッションビルの流行はどのような意義があったとお考えですか。

先日、お亡くなりになったパルコ元会長の増田通二さんが池袋で発想を得て、それを渋谷で大々的に展開したのが渋谷パルコです。その何が新しかったのかというと、単に箱物を建てるだけでなく、そこに先端的なブランドを集め、さらに人と街を巻き込んでミックスして文化として成立させたこと。その意味では渋谷パルコは日本におけるファッションビルの元祖と言えるでしょうね。渋谷パルコが位置的に面白いのは、渋谷駅前から歩いて向かう時に、いくつものアプローチの仕方があるところ。その道筋には、面白い裏道があったりして歩いていると楽しいんですよ。

--渋谷の良い面はどのあたりだとお考えでしょうか。

最近の都市開発では、そもそも何もない場所に巨大なビルを建て、その空間だけで集客しようとするケースが目立ちますが、それでは街として発展しにくい。その点では巨大な建物がないのは渋谷の良いところでしょう。だから駅前を大きく開発せず、それからあまりキレイにし過ぎないほうが良いのでは。SHIBUYA109とかセンター街の界隈の猥雑とした雰囲気がイヤという大人も多いのですが、あれは渋谷らしさだと私は思いますけどね。ギャルもいれば、OLもいるし、渋谷パルコの周辺にはアラサー(around 30)もいる。とにかく色々な要素が混在しているのが渋谷の面白さですよね。

--今後、その良さを保つには?

これからも「裏」のある街であり続けることでしょうね。ここでの裏とは、何があるか分からないような、良い意味で、怪しげな雰囲気ということです。計画的に作れるものではないから、難しいと言えば難しいのですけど。以前のスペイン坂はごちゃごちゃしていて、そういう裏の楽しさがあったけど、今はすっかりと表になっている。最近は原宿や代官山などに、そういう裏的な面白いエリアが出て行っているので、なるべく渋谷にも留めていてほしいなと思いますね。

今後のキーワードは広義の「デザイン」

--渋谷の課題と感じることはありますか。

渋谷は一面的に報道されやすく、たとえば今では「ヤマンバ」はいないわけですが、いまだに存在すると思っている人は結構多いです。国内にも海外にも。そうした変な色の付いたイメージを、どう払拭するかを考えることは大事でしょうね。といっても、それはなかなか難しく、ウェブやイベントで情報を発信し、それを別のメディアに取り上げてもらうといった地道な努力が必要かもしれません。それから課題ではありませんが、昔は駅前のスクランブル交差点は、巨大スクリーンを見るのも含め、東京っぽくて良いなと思っていましたが、最近は勧誘なんかも目立ち、あまり好きではないですねぇ。

--これからの街に必要なものは何だとお考えでしょうか。

今後の東京のキーワードは「デザイン」だと思っています。ここで言うデザインとは、プロダクトやグラフィック、建築など、あらゆるものを含み、洋服のデザインはその一部を構成しているというイメージですね。その広義のデザインを、どのように街に配していくか。いわば、どういう意図のもとに街を編集するか、とも言えますね。そして、そのなかで大きな意味を持つのが「人」でしょう。今の時代、百貨店やファッションビルがどれだけ独自性を出そうとしても、結局、似通ったブランドばかりが集まってしまうのは否めません。となると、どこで差異を出すべきか。やはり人の力が見えてくるような店、街には魅力が出てくると、私は思いますね。

近著紹介

『TOKYOファッションビル』 川島蓉子著
(日本経済新聞出版社)
東京の新しいファッション現象を生み出す起点となり、いまなお大きな影響力を持ち続けているファッションビルはなぜ生まれたのか? 日本のファッションをどのように育んできたのか? 本書では、時代に沿って「まち・みせ・ひと」の動きをどのようにリードしてきたのかを分析し、これからの動向を探っている。

伊藤忠ファッションシステム

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