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KEY PERSON キーパーソンが語る渋谷の未来

渋谷を中心に活躍する【キーパーソン】のロングインタビュー。彼らの言葉を通じて「渋谷の魅力」を発信します。

プロフィール

月刊「散歩の達人」編集長。1995年創刊準備から編集部配属、以来一貫して同誌編集部。2005年、編集長就任。都立日比谷高校卒・早稲田大学教育学部卒。1970年、世田谷区池尻に生まれ、品川区上大崎で育つが、その後の住まいは、世田谷区代沢→中野区野方→豊島区西池袋→練馬区小竹町→練馬区桜台と、東京を北上中。バブル期だった学生時代は工事現場の日雇い仕事でいろいろな街を転々とし、一人暮らしの憂さ晴らしだった孤独な街徘徊が、やがて趣味となり、さらに仕事に。現在の趣味はカヤック。4匹の犬と暮らし、毎朝犬とともに散歩にいそしむ。


「大人のための首都圏散策マガジン」というサブタイトルで発行されている首都圏タウン情報誌「散歩の達人」。創刊以来、一貫して同誌の編集に携わっている現編集長の山口さんは池尻生まれ。子どものころからディープに渋谷に出入りしていた山口さんに、渋谷の魅力についてお話しを伺いました。

渋谷には子供の頃から一人でよく行きました

--山口さんと渋谷の関係は?

もともと生まれが池尻なんです。育ったのは目黒。だから「ちゃちゃっ」と行く繁華街といったら、やっぱり渋谷なんです。目黒にいたときは目黒ステーションビルぐらいしかなくて…。目黒から渋谷までは自転車の距離ということもありました。映画を観るのも、やっぱり「パンテオン」などの映画館がある渋谷。80年代は、先行上映とかになると話題の映画は結構行列ができて、確か「プラトーン」とか「インディ・ジョーンズ」のシリーズなんかも長い行列ができていました。なので東急文化会館は、行列のイメージが強いんです。一人で映画に行くときは、文化会館の地下1階か1階で映画を観て、5階の三省堂で本を探し、一番上のプラネタリウムで星を見たりしてましたね。小学校、中学校のころ両親が働いていたので、昼食代に500円渡され、そのお金で渋谷まで来てプラネタリウムで星を見て帰る、というのをよくやりました。東京育ちということもあって、満点の星にあこがれもありましからね。当時ブームだった「宇宙戦艦ヤマト」を見たのも、「銀河鉄道999」を見たのも文化会館だったと思います。

--10代はどっぷり渋谷で過ごしていたんですね。

そうですね。渋谷は近いから自分個人でも行けるところで、新宿は父親と行くところ、銀座は家族みんなでいくところでした。銀座に行くときなんかは親に、「ジーパンを履いて行くな」とか言われました(笑)。10代後半のませた年齢になると、渋谷でもいろんな場所を利用するようになって、喫茶店なんかでポーズを決めたくなるんですよ(笑)。ジャズ喫茶「渋谷メアリージェーン」は高校生の時から通っていて、ここで本を読んでいました。窓を開ければ渋谷の喧噪(けんそう)が入ってきて、本を読みながらエスプレッソを飲めば気取れましたし(笑)。お店の雰囲気は今と全然変わりません。エスプレッソ飲んで読書する高校生ってどうかと思うんですが(笑)。浪人してたときも暇なので、ここ(メアリージェーン)でずっと本を読んでいたり、受験当日も試験の後に来ていたと思います。名曲喫茶「ライオン」でも、よく勉強してました。高校生のときに「国際映画祭」の第1回があり、プログラム持って渋谷の映画館を真夜中にはしごした思い出もあります。友だちと109のシリンダーの下で待ち合わせて、何時にどこ行って、その次にここに行って…という具合に。朝、山手線で1周寝てから家に帰ったり・・・。目黒を離れたのは大学に入ってからですが、それでもやっぱり渋谷には来てました。大学生のときに新宿のゴールデン街でバイトをしていたんですが、そのときは「新宿ってすごいところだな」って思ったんですけど、それに比べ渋谷は、怖さは少なかった。一時期チーマーがはびこったことがありましたが、逆に言えば、怖さがなかったからこそチーマーがはびこることができたのでしょう。渋谷は「懐がある街」ということだと思うんです。

渋谷の「ゴチャゴチャ感」に面白さを感じる

--当時の渋谷と今の渋谷との違いはありますか?

皆さんよく渋谷の「すり鉢状」の地形が面白いと言いますが、最近はそういう起伏ある面白さがちょっと少なくなっているかな。できれば、いい意味での「ゴチャゴチャさ」を残してほしいなというのがありますね。子どものころに面白かったのが、東横店で親と買い物をしたときです。母親から「自分の服を先に選んできなさい」といわれたりして、東横店の建物の中を一人でよく歩いていたんですが、2階だと思ったら4階につながっていたり、南館とつながっているところの段差が急に変わったり、不思議な感じがあるじゃないですか。親の待つ下のお店に行くまでに、ものすごい時間がかかったりして(笑)。そんなゴチャゴチャした建物に、渋谷の面白さを感じていました。他の街の再開発では大きなビルが「ボン」と建つと、ただそこだけが目立っちゃうんですけど、でも渋谷ってそうはならない。マークシティができたときは、すごい大きな建物が登場したなと思ったんですけれど、ビルが街に溶け込んでしまって、そこに人が「ワーワー」集中するという感じがなかったので、面白いなと思いました。もちろんいい意味で。でも最近は、渋谷の「ゴチャゴチャ感」というのは減ってきました。ちょうど端境期(はざかいき)なのかもしれませんが…。

山口さんの思い出に残る東急文化会館
(白根記念渋谷区郷土博物館・文学館所蔵)

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