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KEY PERSON キーパーソンが語る渋谷の未来

渋谷を中心に活躍する【キーパーソン】のロングインタビュー。彼らの言葉を通じて「渋谷の魅力」を発信します。

プロフィール

慶應義塾大学院 理工学研究科 計算機科学専攻 修士課程修了。2000年博報堂入社。マーケティングプランナーとして、大手企業からベンチャー企業まで幅広い領域のマーケティング戦略、ブランド戦略、コミュニケーション戦略の立案を行う。2004年2月、博報堂の同僚、田中禎人さん(代表取締役 共同最高経営責任者)とともにエニグモを設立。

カジュアルな渋谷は、精神的に若いエネルギーのある人たちの街

--創業時は青山一丁目にオフィスを構え、その後渋谷に移りましたね。渋谷移転の経緯をお聞かせください。

2006年にまず並木橋に移って、その後この場所に移転したので、渋谷で2軒目になります。もともと青山一丁目からの移転を考えている際、最初は銀座線沿線を探しました。ちょっと離れて虎ノ門とかも検討しました。「英語だとタイガーゲートか」「ちょっと響きがかっこいいよね」という話にもなって…でも、実際に虎ノ門に行ってみて、非常に厳かなで、そこから何かが生み出されるというよりは、何か権威を守るみたいな雰囲気を感じました。表参道や青山は、センスを磨くとか、おしゃれの仲間入りをするみたいな印象はありましたが、生命力をあんまり感じませんでした。そうした中、渋谷にはすごいエネルギーを感じました。明るさなのか、歩いている人が出しているオーラなのか、とにかく何かを生み出すエネルギーがありました。日当りが良くて、高層ビルが並ぶ新宿みたいな抑圧感もないし、若者ならではの生命力があり、かといって泥くさ過ぎもなく適度なセンスもあって…ですから、何の抵抗もなく渋谷を選びました。

--「ビットバレー」と呼ばれていた頃の渋谷は、学生としてどのようにご覧になっていましたか?

僕は大学院でコンピューターサイエンスの研究をしていましたので、インターネットの仕組みは理解していました。ですから当時は、実体以上に、煽られているような感じがしていました。例えば当時、売上のあまりないプロバイダーの株価が急騰していたのですが、サーバーを置いているだけでもプロバイダーになれてしまうことが分かっていたので、どうしてこんなに騒がれているのか不思議でした。今の渋谷には、過熱気味だったビットバレーを乗り越えて、ちゃんとした会社が残っていると思います。今でも「渋谷近辺で盛り上がろう」という話は結構あって、「渋谷2.0」という会合を開催したこともあります。実態は、渋谷にいるベンチャーの社長とか経営層で集まる飲み会なのですが(笑)。1年半ぐらい前に開いた時は30〜40人ほどが集まりました。

--現在の渋谷の街をどのように捉えていらっしゃいますか?

渋谷には、「カジュアルでいい」という空気があります。打ち合わせや会合の話があっても、場所が渋谷だと「自由にカジュアルでいいよね」という共通認識があると思います。これが、霞ヶ関や丸の内、銀座だと、少しかしこまった感じになります。例えば丸の内で会合という案内を送ると「フォーマルですか」とメールが来ることもありますが、渋谷だと絶対あり得ません(笑)。また、ありきたりですが、渋谷には若さがあります。最初は大学時代に遊んでいた渋谷のイメージがあり、若者が我が物顔で歩いているという印象でしたが、久しぶりに行ってみると、若い人の街といっても、年齢と言うよりは考え方とか精神的にいい意味で若いエネルギーのある人たちの街という印象を持ちました。

--渋谷にオフィスがあることはメリットになっていますか?

立地はすごく大きいです。採用のハードルは場所によって全然違うと思います。渋谷から引っ越したら辞めてしまう人もいるんじゃないかな(笑)。通勤しやすさはやはり重要だと思います。例えば六本木ヒルズに入っても、今より採用しにくいだろうと思います。渋谷に比べて通いにくいですから。朝の10分、20分が変わってきますし、終電の時間も違ってきます。働く人としては、結構そういうところが大きいのではないでしょうか。渋谷という立地は、エニグモにとっては採用の後押しになっている大きな要素だと思っています。あと、渋谷は営業に出やすいですので、売り上げにも影響してきます。交通の便が良く、誰にでも来てもらいやすいという点も大きいですね。来客があると社内に活気が出ます。同じことをやっていても、来客があるのと無いのとでは全然テンションが違います。営業でないスタッフは外との接点が少ないですから、来客さえもなければどんどん陰にこもってしまいます。来客のある会社には外の風が入ってきますし、あいさつも頻繁にするようになるので、会社の空気がすごく変わってきます。人が集まるという点は、とにかく渋谷にして良かったと感じるポイントです。

渋谷は新しい文化やビジネスが生み出されるシンボリックな場所になってほしい

--渋谷の街を歩くことはありますか?

時間があるときは代官山の方へも行きますし、恵比寿方向のカフェに行くこともよくあります。あと青学の方に上がっていくこともあります。以前、会社があった並木橋の風景が好きです。明治通りがバーンと抜けているので見通しがいいですね。並木橋のオフィスは、ベランダがあり、そこからの見晴らしが良かった。今のオフィスは11階で、夕日が見えます。夕日は、たまにすごい色になる時がありますよね、そういう時の渋谷駅の周辺の風景はものすごくきれいです。

--あえて渋谷の課題を挙げるとすれば?

246と明治通りの交差点の周辺。会社への通り道だからということが大きいのかもしれませんが、あそこは「何か暗いな」と感じます。ガードがあって、下から246を渡るパターンと、南口を出て歩道橋で行くパターンがありますが、あの辺りはちょっとよどんでいる印象があります。渋谷の谷の本当に谷の部分ですよね。そのほかの要望としては、飲食店ももっと増えてくれればいいですね。昼食に一人で行ってパッと食べられる店は結構ありますが、4〜5人で行って、ゆっくり食べられる店が意外と少ない。我々ぐらいの世代の会社では、結構グループで食べに行くことが多いので、それを受け入れる場所がもう少しあってもいいかなと思います。

--今未来の渋谷に対して期待することはどんなことですか?

昔に比べて、今はビジネスマンも渋谷に行きやすくなったと思います。僕が学生の頃には、サラリーマンがセンター街を歩いていると本当に違和感がありました。でも今はそうでもありません。渋谷は、若者もいれば、サラリーマンもいるし、買い物に来る主婦もいる…すごく幅広い人を受け入れられる街になってきているのではないかと思っています。それは崩してほしくありません。先ほど、渋谷は「精神的に若い人たちが集まる」という話をしましたが、そういうエネルギーを集める場所として、それを生かした新しい文化が生まれたり、新しいビジネスができたり…渋谷はそういう何かを生み出すシンボリックな存在になってほしいと思います。

--「シェアモ」とのシナジーも、渋谷から生まれるといいですね?

渋谷でイベントをやれればいいと思います。以前、横浜・山下公園にあるハッピーローソンで「子供服のシェアを実際に体験しましょう」というイベントをやったことがありますが、そうしたイベントを渋谷でも――という可能性はあります。渋谷はやはりシンボリックな存在ですから。シェアモは、実際に物を送ったりするのですが、渋谷にシェアリングのブースみたいなものを設けて、そこに持っていけば送らなくて済むような、そういう場所は作ってみたいですね。要らない物をそこに置いておけば、誰か欲しい人がそれを持っていく――みたいなブースがあれば、すごく合理的なのではないかと思います。

株式会社エニグモ

シェアモ

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