渋谷文化プロジェクト

渋谷をもっと楽しく!働く人、学ぶ人、遊ぶ人のための情報サイト

KEY PERSON キーパーソンが語る渋谷の未来

渋谷を中心に活躍する【キーパーソン】のロングインタビュー。彼らの言葉を通じて「渋谷の魅力」を発信します。

最近、渋谷の街に少しずつ大人が戻ってきた。色んな気分でいられる街になってほしい 公園通りの人気カフェ「カフェ・アプレミディ」を経営する橋本徹さんは、これまでに、伝説的なフリーペーパー『サバービア・スイート』の発行や、コンピレーションCDの選曲をはじめ、渋谷の街で音楽に関わる仕事を精力的に続けてきました。その橋本さんに、カフェをはじめたきっかけや、渋谷の音楽文化の変遷などを伺いました。 近年、明らかに渋谷に大人が戻ってきた --「カフェ・アプレミディ」をオープンした経緯を教えてください。
友人や、自分と趣味の似た人たちと和める空間を作ろうと思い立ったのがきっかけです。カフェという業態にこだわっていたわけではなく、心地よい空間であれば別に何でもよかった。ですから当初はあくまでも副業と考えていましたが、予想以上に色々なメディアに注目していただき、次第に責任感が増して「これは飲食業のプロフェッショナルとして本腰を入れなければ」と、後から自覚が芽生えてきました(笑)。いわゆる「カフェブーム」の先駆けと紹介されることが少なくありませんが、もちろん狙ったわけではありません。色々な偶然が重なったのだと思います。たとえば当時のカフェは1階や2階が当たり前でしたが、そもそもプライベートな空間を作るのが狙いだったので5階でもいいかな、と思っていまの場所に決めました。周りの人には「何でそんな目立たない場所に・・・」と驚かれましたが、それが結果として「隠れ家的」などと紹介され、今ではビルの奥まった一室で営業するカフェも珍しくなくなっています。ブームは喜ばしい側面ばかりではなく、一時期はディベロッパーや企業が次々に参入し、ビジネスだけで経営しているカフェと一緒くたにされるのは抵抗感がありました。もっとも00年後半から01年をピークにブームは落ち着き、以後撤退したところも少なくないようです。

--3年後には二号店の「アプレミディ・グラン・クリュ」をオープンされましたね。
カフェ・アプレミディでは、やりたくてもできないことがたくさん出てきたからです。たとえば大人が楽しめる本格的なキュイジーヌも出したいなと思ったのですが、カフェのキッチンでは狭すぎました。ワインへの興味も増していたのですが、ワインセラーを設置する場所もなく、またBGMに流すCDをディスプレイして販売するスペースもあったらいいなと思って。そういうアイデアをグラン・クリュに詰め込んだのです。しかし、グラン・クリュを出店し、自分と、普段渋谷にいる人とのギャップを実感しました。これまで「自分がこういう風にされたら嬉しいな」という思うことを形にしてきて、実際、カフェは受け入れられたのですが、グラン・クリュでは「思っていた以上に、そこまで望んでいる人は少ない」と感じています。例えばカウンターに食後酒を並べてもオーダーしてくれる客は多くない。これが青山や広尾のシークレットバーだったら、興味を持つ人はもっと多いはずです。きっと大人は、ある程度、地域を住み分けているのでしょう。そういう大人を渋谷に呼び戻すことの難しさを強く感じています。ただ、オープン当初と比べたら、明らかに渋谷に大人が戻って来ているという実感はあります。

--二つの店舗では客層は違いますか。 大きくは変わりません。どちらも25歳から35歳くらいの方がメインですが、グラン・クリュの方が女性率が高いかもしれません。やはりメディアの影響力は大きく、休日には地方からもお客さんが訪れ、関西弁が飛び交うことも。またアジアの方に加え、フランス人をはじめヨーロッパの人々に気に入ってもらえることも多く、外国人が多いのも特徴です。メディアを見て訪れたお客さんは「一度は行ってみたい」と思っている方が大半ですから、それを次の来店につなげるのは空間やサービス、さらにスタッフの力だと思っています。



人々の“記憶に残る”のが魅力的な街。色んなしかけを生み出してほしい。 --渋谷と音楽のつながりをどのように感じていますか。
90年代には渋谷は、世界で最もレコード・CDの商品量や情報が集積される街になりました。ボクも若い頃は埋もれているレコードの中から自分の趣味に合ったものを見つけ出そうと、散々、歩き回りましたね。今でも世界一の状況は変わりませんが、当時と比べて少し淘汰され、さらにジャンルも変化・細分化されました。90年頃から、いわゆる「渋谷系」と呼ばれる、60〜70年代の音楽の影響下でセンスを重視するポップスが流行したのですが、90年代半ばにはストリートのリアリティを求めるヒップホップやR&Bに圧倒されるようになりました。そうした変化はファッションにも表れています。80年代後半には当時の言葉で「キレカジ」と呼ばれるようなものが主流でしたが、渋谷系と呼ばれる音楽が登場し始めた頃から古着をおしゃれに取り入れるファッションが流行し、そうこうするうちに90年代半ばにはルーズ・シルエットのBボーイファッションが街にあふれ返るようになりました。最近は、また少しキレイめな感じのファッションに戻っている印象を受けますね。ボクは『サバービア・スイート』というフリーペーパーを発刊したことなどから、メディアのプロフィールに「渋谷系をリードした―」などと、まくら言葉のように書かれてきましたが、今では渋谷系という言葉の意味も大きく変わり、最近のメディアでは「パラパラ」を踊っている人たちを、そう呼んだりもするようです。ボクとは世代も趣味も違うので詳しいことはわかりませんが、それはそれで勢いのある一つの文化だと見ています。

--現在の渋谷の音楽シーンは、どのような状況なのでしょうか。 クラブやライブハウスで知り合ったり、ネットを通じて集まった色々な趣味嗜好のサークルが存在し、今でも発信力は衰えていないと思います。ただ個人的には各サークル間の交流が少ない点を残念に感じています。もっとも、今の若者は何事においてもそういう傾向があるようですが。新宿にもレコードショップはたくさんありますが、新宿に比べて渋谷は世の中や時代の影響を受けやすく、同時に影響を与えやすいという性格があるようです。

--今後、渋谷がさらなる発展を遂げるには何が必要だと思いますか。
色んな人が色んな気分でいられる街であってほしいですね。例えば、いつ訪れても自分よりも年下しかいない店からは、自然に足が遠のいてしまうじゃないですか。それは街全体にも言えると思うのです。だから40〜50代の粋なオジサンもいれば、20代の若い女性も闊歩しているような街を目指してほしいと思う。渋谷は他の街に比べると、個人や小さなグループの趣味・趣向が街の性格を形成している側面が強いと思います。しかし大きな視点で「集客」を考えると、個人や小グループの力は限られている。とくに大人を渋谷に呼び戻すには、たとえば個人や小グループがアイデアを出し、資本力のある企業がハード面を受け持つなど、双方の有機的な結び付きが不可欠ではないでしょうか。ボクはそのためにも今後は、「予算はあるけどアイデアがない」といったところとのパートナーシップも模索したいですね。街が面白ければ、きっと映画を見たあと食事や買い物をしますよね。魅力的な街というのは、単にモノやサービスを提供するだけでなく、そこから発生する興味や好奇心、思い出など、さまざまな記憶を残せる場所だと思うのです。そのための仕掛けやスポットが渋谷の街にたくさん生み出されればいいなと思いますね。

■プロフィール
橋本徹さん
1966年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、講談社に就職。『ホットドッグ・プレス』の編集に就く一方で、90年末に『サバービア・スイート』というレコード紹介のフリーペーパーを創刊し、“シブヤ系”と呼ばれるカルチャーの火付け役の一人となった。93年に独立し、『フリー・ソウル』というコンピレーションCDのプロデュースなどに加え、96年から3年間、タワーレコードのフリーマガジン『バウンス』の編集長を務める。99年、「カフェ・アプレミディ」をオープン、さらに02年にはダイニングサロン「アプレミディ・グラン・クリュ」、複合型セレクトショップ「アプレミディ・セレソン」を開いた。現在は、その経営の傍ら、CDの選曲やDJ・執筆活動などに携わる。

店舗紹介
Cafe Apres-midi(カフェ・アプレミディ) 99年、公園通りにオープンし、「カフェブーム」の先駆けとなったカフェ。ゆったりと配置されたソファ、間接照明に照らされた木の温もりのあふれるインテリア、そして橋本さんの選曲によるゆるやかなBGMに包まれて、カフェメニューや各種アルコール、デザートなどが楽しめる。02年には、同じビルの4階に本格的なイタリア〜フランス料理が楽しめる「アプレミディ・グラン・クリュ」がオープン。さらに、同年、渋谷パルコpart1の地下1階に、音楽CDや雑貨、装飾小物などを扱う複合的セレクトショップ「アプレミディ・セレソン」も開店した。
Cafe Apres-midi(カフェ・アプレミディ) 渋谷区神南1-15-7 5F
TEL:03-5428-0510
OPEN:12時〜翌1時L.O.(日〜木)、12時〜翌4時L.O.(金・土、祝前日)
Apres-midi Grand Cru(アプレミディ・グラン・クリュ)渋谷区神南1-15-7 4F
TEL:03-5428-5121
OPEN:12時〜24時
Apres-midi Selecao(アプレミディ・セレソン)渋谷区宇田川町 15-1 渋谷パルコpart1 B1F
TEL:03-5428-5711
OPEN:10:00-21:00

オススメ記事