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KEY PERSON キーパーソンが語る渋谷の未来

渋谷を中心に活躍する【キーパーソン】のロングインタビュー。彼らの言葉を通じて「渋谷の魅力」を発信します。

プロフィール

1986年大阪府生まれ。青山学院大学在学中、社会起業プロジェクト「SOL」の代表及びシブカサの立ち上げにかかわる。大学4年次より半年間、中国の投資コンサル会社に就職。半年後に退職して帰国しシブカサ代表となり、2011年1月、シブカサを一般社団法人化。活動の充実化に向けて新たな取り組みをスタートさせている。

渋谷の街なかで突然の雨に降られた時に飲食店やショップなどでビニール傘を無料で貸し出すサービス「シブカサ」。忘れ物のビニール傘が大量に廃棄されるのが「もったいない」というシンプルな発想から、青学を中心とした大学生サークルがスタートしました。この活動への賛同が相次いで、今や貸し出し用ビ ニール傘を設置する提携店は渋谷の街全体に広がりつつあります。2011年1月に一般社団法人化して、エコ活動として、地域コミュニティを活性化する手段として、ますますの充実を図るシブカサの活動に注目しました。

傘をシェアすることが街に深く入り込むきっかけになるといい

--まずはシブカサの仕組みを説明していただけますか。

処分されるはずだったビニール傘を渋谷の街なかでシェアする活動です。企業などから忘れ物等のビニール傘を寄付してもらい、おしゃれにデザインしてカフェやアパレルショップ、美容室などの提携店に設置して、急な雨の時にお客さんに無料でレンタルしています。どの提携店に返してもよく、返却時、渋谷の地域通貨のアースデイマネーを50r(50円相当)プレゼントするという仕組みになっています。私が学生時代に代表を務めていた社会起業プロジェクト「SOL」で2007年に立ち上げたもので、現在、そのプロジェクトをそのまま引き継いでいます。

--シブカサが生まれたきっかけを教えてください。

日本国内の傘消費量は年間1億2000万本に上るそうです。そのうちの大半を占めるビニール傘は、使い捨て感覚で放置されることが多く、警察も忘れ物として対応できないとか。ほとんどが廃棄されるという、何とももったいない状況。それを再利用しようというシンプルな発想がシブカサの原点です。それから、傘というツールを通して、渋谷の良さをもっと発信したいという思いも大きいです。渋谷ってダイナミズムがあってとても楽しい街ですが、その反面、人の行き来が激しくてせわしないイメージがありますよね。私自身が田舎の出身だからよく分かりますが、慣れない人にとってはとても疲れる街なんです。ただ、それは街の表面しか見ていないからではないか、と。神宮前や桜丘町など、少し奥に入ると、強い思いや渋谷の街へのプライドを持った経営者によるショップや美容室がたくさんある。そういう場所を教えると、初めて渋谷に来たような人も、街の良さを分かってくれるんですね。シブカサの提携店の多くは個人経営で、思いやこだわりの強い経営者がたくさんいます。傘をシェアすることが、これまでよりも少し深く渋谷という街に入り込むきっかけになればいいなと思います。

--提携店はどれくらいあるのでしょうか。また提携店のメリットは?

キャットストリートにある加盟店、カフェ「ウズナ オムオム」。写真はオーナーの門崎杏子さん

現時点の提携店は、渋谷駅周辺や青山、表参道、原宿などに39店舗。年間延べ2000本ほどの傘が流通しています。飲食店やアパレルショップなど様々ですが、特に美容室では、せっかく髪をきれいに整えた直後に雨に濡れてしまうのは申し訳ないということで、もともと傘を買って用意されているお店が多いそうなんです。だから喜んで提携してくださいます。活動を開始した頃、こちらから5店舗ほどを訪問して提携してもらいましたが、その後はすべて活動を知ったお店側から参加を申し込んでくださっています。「この街をもっと良くしたい」「環境について考えたい」「地域のコミュニティに参加したい」という思いを持つ経営者が多いですね。2008年に北海道洞爺湖で環境サミットが開かれた時期は、環境意識の高まりによって参加が増えました。提携先からは「活動に参加していることが店としての自信になる」といった声をいただいているほか、傘の返却が来店のきっかけになっているという話もよく聞きます。また「地域コミュニティづくり」の希望もあるため、ツイッターでショップリストを作るなどして提携店同士を繋げる試みをしたり、スタッフがお互いの店を行き来するなどの繋がりが徐々に生まれています。今後は、こうした提携店間のコミュニティ強化をさらに進めたいです。

みんなが楽しめて結果的に環境への負荷が減るしくみを作りたい

--2011年1月に一般社団法人化して再スタートを切った理由は?

活動の幅を広げたいという思いからです。私は学生時代からシブカサにかかわっており、その後、半年ほど中国の投資コンサル会社に就職して現地に住みました。そこで中国人にシブカサの話をすると、「中国ではあり得ない」と口を揃えるんですね。まず、借りた傘を返すという行動が考えられないと。そんな体験を通して、シブカサは日本人のモラルや文化の中でしか通用しないモデルだと気付きました。一方で、中国から日本を見ると、大事なものがどんどんなくなっているような危機感も覚えました。例えば、外国人に日本の良さを尋ねると決まって返ってくるのが、京都や原宿といった街の話であって、日本人の文化性や精神性ではない。何というか、日本人としての誇りを感じさせてくれるような答えではないんですね。そんなことを考えた時、小さな活動かもしれませんが、人間性を土台として成立するシブカサは、日本人の良さを見つめ直すことに繋がると思ったんです。その後の行動は我ながら素早く、会社を退職して帰国し、シブカサを後輩から引き継いで一般社団法人化に踏み切りました。NPOにしなかったのは、完全なボランティアではなく、一つのビジネスモデルとしての道を探りたかったから。逆に株式会社にしなかったのは、営利活動と見られて思いが伝わりにくいと考えたから。そんな理由で、両者の中間と取れる一般社団法人が活動の趣旨に合っていると考えました。

--今後は、どのような方向性を目指すのでしょうか。

これまでのようなボランティア活動ではないシステムとして機能させることが当面の目標です。例えば、CSR活動として傘の加工までして送ってくださる企業があります。そのようにして作業の手間が省ければ、スタッフが提携店の拡大に力を注げるようになりますから、活動のフロー全体を見直して改善を図っているところです。活動を応援してくださる企業も多く、これまでは寄付金に加え、企業とのタイアップイベントも大きな収入源となってきました。今後もイベントは続けると思いますが、あくまでもイベントは特別なものであって、本業だけで回っていくシステムをつくることに大きな意味を感じています。それがなかなか難しいのですが。一つの形としては、提携店から賛同金をいただく方法もあり得ます。一律に徴収するのではなく、広告入りの傘立てを設置するなどプラスアルファのサービスを考案して、どちらもプラスになるビジネスモデルを模索中です。あとは、利用者同士が繋がる仕掛けをつくりたいな、と。例えば、傘に電子情報タグを付けて移動の履歴を見られたり、利用者がリレー形式でメッセージを残せるようにしたり。ちょっとした楽しさを付加すれば、利用は増えるでしょうし、返却率も高まって、活動がより活発になっていくはずです。利用者にすれば、突然の雨がしのげるうえに地域通貨がもらえるし、何より楽しい。店舗にとっては、地域のエコ活動に参加しているという自負が生まれるし、お客さんの再来店も促される。エコだけの視点から環境問題を捉えるのではなく、深く考えずに楽しく利用していたら、結果的にみんながハッピーになり、環境への負荷も減っていたという活動が理想です。

--東日本大震災においては、傘の寄付をされたと伺いました。

シブカサができる形での支援をしたいと考え、約10ヵ所の避難所にビニール傘を届けました。きっかけは、5月2日に陸前高田市消防隊の高田分隊から、ツイッターを通して「傘が足りていないので送ってほしい」という要請をいただいたことです。翌日には発送しました。高田分隊の方々は、被災地のニーズに合った支援を受けるために、ツイッターなどインターネットを利用してダイレクトに要望を送ることで、ミスマッチを防いでいるということでした。今後も、要請を受けしだい、他の避難所にも傘を寄付したいと考えています。

6月上旬、渋谷スクランブル交差点の街頭ビジョンで放送されたシブカサCM。動画はyoutubeでも公開中

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