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独断と偏見で「2016年の渋谷」を振り返る

2017年も早10日間を過ぎましたが、遅ればせながら渋谷の記録として「2016年の渋谷の重大ニュース」をランキング形式で振り返っていきたいと思う。なお、ランキングの順位は、あくまでも独断と偏見で決めたものであるため、やや偏りや違和を感じる人もきっと多いかもしれませんが、ご容赦ください。

<独断と偏見で選ぶ!2016年、渋谷ニュースランキング>
1位:「渋谷パルコ」が建て替えに伴い一時休業
2位:「渋谷のラジオ」開局、渋谷の街にコミュニティFMが復活!
3位:スクランブル交差点がホコ天に!−ハロウィン、大晦日カウントダウン
4位:南街区プロジェクトの新名称「渋谷ストリーム」および概要発表
5位:渋谷宮下町計画の新名称「渋谷キャスト」および概要発表
6位:「トークの渋谷」へ−「カルカル」「ロフト」のツートップ誕生で
7位:”シャビ”改め“トップミュージアム” 東京都写真美術館
8位:渋谷から2チーム参加! バスケボールBリーグ開幕
9位:金王八幡宮で500年ぶりに古式弓術神事「御的」復活
10位:落書き防止も兼ねて「青ガエル」が「ポムポムプリン」と初コラボ

1位:「渋谷パルコ」が建て替えに伴い一時休業
堂々の重大ニュースのトップは「渋谷パルコの一時休業」。渋谷パルコパート1は1973年、パート2は1975年、パート3は1981年にそれぞれオープン。開業以来、パルコは40年以上にわたり、新進気鋭のファッションやアバンギャルドなアート、映画、演劇など、若者文化の情報発信地としての大きな役割を果たしてきた。ご存知の通り、「公園通り」というネーミングは1973年のパルコオープンに伴い、それまでの「区役所通り」という名称から一新されたものだ。いわば、今日の「公園通り」の表通り、「スペイン坂」などの裏通りの活況は、パルコがもたらしたものといえるだろう。長きにわたり、渋谷の若者文化を支えてきたカルチャーの殿堂であったが、建て替えに伴い8月7日をもって全館が一時休業へ。
直前には映画「シン・ゴジラ」公開に合わせて外壁にゴジラのオブジェを設置し、「パルコがゴジラに破壊された」というストーリーづくりが行われるなど、最後までパルコらしい演出が光った。現在、渋谷区役所の建て替え工事も同時に進み、2020年に向けて、渋谷駅周辺と同じく渋谷公園通りも再開発の真っ只にある。
左)解体工事前の「渋谷パルコパート1」 右)2019年の完成イメージ
工期は2017年3月から東京オリンピック開催を控えた2019年9月まで。立て替え工事を経て、パート1、パート2を含む同エリアには高さ約110メートル、地上20階建ての複合商業施設の開業が予定。物販や飲食のほか、劇場、クリエーター育成施設、事務所などを含む施設には、ファッションやアートなど、80年代に隆盛を誇った「公園通りカルチャー」の復活に大いに期待が寄せられている。

<関連記事>
・消えゆく渋谷の記憶をミュージックビデオでアーカイブする(2016/7/26)
・渋谷のラジオ/「渋谷パルコ Last Dance_」(2016/7/22)

2位:「渋谷のラジオ」開局、渋谷の街にコミュニティFMが復活!
かつて渋谷にはマークシティを拠点とする「SHIBUYA-FM」というコミュニティFMがあったが、2013年に経営難などの事情から惜しまれつつ休止。3年の歳月を経て、「風とロック」の箭内道彦さんを代表理事として、渋谷区商店会連合会などの全面協力のもと、昨年4月に「渋谷のラジオ」(運営:NPO法人CQ、周波数:87.6Mhz)が開局した。スタジオは渋谷駅東口から徒歩5分、明治通り沿いの金王橋から渋谷川を渡った先にあるサンクスプライムビルの1階。路面からガラス越しに生放送中の各パーソナリティーの様子をのぞくことができるなど、地元密着のラジオ局ならではのオープンなスペースが特徴だ。「渋谷のラジオ」の一番の魅力は、何と言っても多彩なパーソナリティー陣だろう。90年代のシブヤ系を代表する歌手・野宮真貴さん、カジヒデキさんらミュージシャンや、HKT48劇場支配人の指原莉乃さんらコミニュティFMらしからぬ豪華な出演陣のほか、「渋谷のラジオは、聴くラジオではなく出るラジオです」という箭内さんの言葉通り、渋谷で暮らす人や働く人など、毎日、渋谷に関連する多彩なゲストが出演。その数は9カ月間で約4000人近くに上るという。
左)オンエア中のスタジオ 右)寄藤文平さんが制作した「渋谷のラジオ」ロゴ
スタジオを訪れた人が一様に感じるのは、まるで部室のような和気あいあいした雰囲気と懐かしさだろう。初めて会った人びと同士であっても、同じ「渋谷」というキーワードのみで新たな輪が広がる。そんな人と人の縁をつなぐ場として、スタジオが機能している点は見逃せない。まずは幸先の良いスタートダッシュを切った同ラジオであるが、今後5年、10年と持続していくためには、売上げや体制、番組内容、聴取率など、まだまだ課題が残る。真価が問われるはこれからといえる。
スタジオは窓越しに通りから覗ける。人気アーティストがゲストの時には、多くのファンが集まる。
ちなみにウェブサイト「渋谷文化プロジェクト」でも同名のラジオ番組を、隔週水曜日15時半〜16時まで放送中。番組パーソナリティーはシブヤ経済新聞の西樹編集長が担当し、渋谷の再開発から渋谷発のカルチャーやイベントなど、毎回ホットな話題をテーマにゲストを迎えてトークを進めている。ぜひ一度聴いてみてください。

3位:スクランブル交差点がホコ天に!−ハロウィン、大晦日カウントダウン
賛否はあるものの、すでに渋谷の秋の風物詩として定着しつつある「ハロウィン」。昨年は10月31日のハロウィン当日が「月曜日」であったことから、週末の10月28日(金)〜31日(月)までハロウィンイベントが実質4日間続いた。警察も渋谷区も各商店街もどこが一番のピークになるのか、なかなか予想が立てづらい状況となった。
左)28日(金)は雨模様で人出が少なかった。 右)31日(月)はスクランブル交差点に仮装者があふれた。
初日の28日(金)は朝から雨が継続に降り、気温も11℃前後と肌寒かったせいか、例年の賑わいは全くなく、仮装する若者たちは疎ら。翌日土曜日以降は天気が好転し、多くの人びとが溢れた。昨年までのセンター街の混雑ぶりやスクランブル交差点にあふれる危険性から、SHIBUYA109周辺や道玄坂、文化村通りを一時的に交通規制し、歩行者天国にする試みが初めて行われた。確かにスクランブル交差点付近は自動車の交通量も多く、事故やテロなどの危険性もはらむ。歩行者の行動を強行に規制するよりは、むしろ「道路を開放した方が通行上の安全を確保できる」という逆転の発想ともいえる。
こうした大胆な試みは昨年大晦日、6万人以上の人出を集めたスクランブル交差点の「カウントダウンイベント」でも実施され、2020年の東京五輪に向けたシュミレーションにもきっと役立ったことだろう。

<関連記事>
・【フォトギャラリー】秋雨襲来! ハロウィンの渋谷(2016/10/29)
・渋谷駅周辺を初のホコ天、カウントダウンイベントで新年を祝う!(2017/1/1)

4位:南街区プロジェクトの新名称「渋谷ストリーム」および概要発表
5位:渋谷宮下町計画の新名称「渋谷キャスト」および概要発表

トップに「渋谷パルコの一時休業」が挙げられたが、4位、5位にも再開発の話題がランクイン。現在、渋谷駅周辺では「渋谷駅街区」「渋谷駅南街区(渋谷川沿い)」「道玄坂一丁目駅前街区(東急プラザ跡地)」「渋谷駅桜丘口地区」「渋谷宮下町計画(都営宮下町アパート跡地)」「南平台プロジェクト」と同時に6つの地区の工事が着々と進んでいる。その中でも、東急東横線旧渋谷駅ホーム及び線路跡地、渋谷川の水辺空間を含めた再開発プロジェクトとして注目されるのが「渋谷駅南街区(2018年秋開業)」だ。
左)かつての渋谷川の風景 右)2018年秋にオープン予定の「渋谷ストリーム」イメージパース(画像提供=東急電鉄)
昨年10月には施設名称が「渋谷ストリーム(SHIBUYA STREM)」と決定。高さ180メートル(地上35階)、延床面積約116,700平方メートルの大規模複合施設内には、商業店舗のほか、クリエイター向けのコ−キングスペースやスモールオフィス、カフェ、フットサルコートなどに利用可能な多目的広場、シティホテルなどの計画詳細が明らかとされた。「仕事」と「遊び(エンターテイメント)」が共存する渋谷らしい自由な働き方や、暮らし方を具現化するスペースとして期待できそうだ。

渋谷駅から代官山方面に向かう渋谷川沿いの再開発が「渋谷ストリーム」である一方、原宿方面に向かう、渋谷川を暗渠としたキャットストリームの入り口付近の開発が「渋谷宮下町計画(都営宮下町アパート跡地)」だ。
2017年度にオープン予定の「渋谷キャスト」イメージパース(画像提供=東急電鉄)
渋谷ストリームと同じく昨年10月に施設名称が「渋谷キャスト(SHIBUYA CAST)」に決まり、その詳細計画も明らかとされた。敷地面積は約5020平方メートル。高さは約71メートル(地下2階〜地上16階)、延床面積は3万5000平方メートル。地上1階は小型スーパーなどのショップエリア、1〜2階はシェアオフィス「co-lab」とカフェ、2〜12階はオフィスエリア、13〜16階は共同住宅で構成など、オフィス空間と住居が共存する施設となる。渋谷川沿いに立地する「渋谷ストリーム」「渋谷キャスト」の2つの施設の開業に伴い、代官山から原宿方面まで渋谷の就業や生活行動の範囲を大きく広げるだろう。

<関連記事>
・渋谷川沿いの東横線線路跡地を活用し、新しい複合施設「渋谷ストリーム」が誕生!(2016/10/27)
・東横線旧渋谷駅の「かまぼこ屋根」が復活!(2016/10/28)
・SHIBUYA FUTURE - 渋谷の街が劇的に生まれ変わる!(2014/2)


6位:「トークの渋谷」へ−「カルカル」「ロフト」のツートップ誕生で
「再開発」のニュースが上位に目立った一方、渋谷カルチャーの新たなトレンドとして注目されるのが「トーク」だ。2016年7月、KINOHAUS(キノハウス)の1階に、新宿の老舗トークライブハウス「ロフトプラスワン」の系列として新しく「LOFT9 Shibuya」がオープン。ライブハウスのほか、カフェスペースやギャラリー、映画関係の本・グッズなどを販売するコーナーも併設し、路面店ならではの複合的なカルチャースペースとして展開している。そもそも円山町といえば、老舗ミニシアター・ユーロスペース、名画座・シネマヴェーラ渋谷、多目的劇場・ユーロライブのほか、ライブハウスやクラブなども数多く集積している土地柄であるが、サブカルをリードする同ライブハウスの誕生に伴い、円山町エリアの文化系度はより一層高まっている。
左)東京カルチャーカルチャー 右)LOFT9 Shibuya
「LOFT9 Shibuya」と同じく昨年12月、お台場で営業を続けてきた「東京カルチャーカルチャー」が渋谷に移転。IT企業のニフティが2007年から運営を開始した同飲食店は「ネットとリアルをつなぐ場所」をコンセプトとし、トークイベントを中心に音楽ライブやお笑い、企業向けイベント、商品プロモーションなどを連日行っている。何の因果か、ライバル関係とも言える「トークライブ」のツートップが同時期に渋谷にやってきたのは、偶然なのだろうが、何とも不思議な縁を感じる。今まで渋谷は「映画の街」「音楽の街」「ファションの街」など、様々な代名詞で呼ばれてきたが、新たに「トークの街」としての肩書きも加わる。考えてみれば、2012年に開業した渋谷ヒカリエ8Fのイベントスペース「8/コート」や、渋谷に数多く点在するコワーキングスペースでも連日様々なイベントが催されており、「渋谷=ライブエンターテイメント」としての色合いがますます高まっていきそうだ。

そのほか、7位は「”シャビ”改め“トップミュージアム” 東京都写真美術館」。日本を代表するミュージアムが2年ぶりにリニューアルオープンし、昨年は杉本博司展や世界報道写真展、写真新世紀東京展など、質の高い展示企画が催された。8位は「渋谷から2チーム参加! バスケボールBリーグ開幕」。どちらかといえば、サッカー代表戦で盛り上がる渋谷スクランブル交差点を想起する人もきっと多いと思うが、渋谷を拠点とする「サンロッカーズ渋谷」「アルバルク東京」の2チームの参加に伴い、今後のBリーグの盛り上がりいかんによっては、渋谷が「バスケの聖地」として定着していくかもしれない……。
左上)再オープンした東京都写真美術館 右上)古式弓術神事「御的」
左下)サンロッカーズ渋谷のマスコット「サンディー」 右下)「ポムポムプリン」とコラボした青ガエル

続いて、9位は「500年ぶりの古式弓術神事『御的』の復活」。昨年春、渋谷・金王八幡宮で、弓矢による古式破魔神事「御的(おまと)」の奉納行事が行われた。引目式の射手は、旧渋谷城々主家で、現在の澁谷本嫡宗家当主・澁谷光重(みつしげ)氏が務め、鎌倉時代より伝わる神事が500年ぶりに復活した。10位は「落書き防止も兼ねて『青ガエル』が『ポムポムプリン』と初コラボ」。渋谷・ハチ公前広場に設置される東急5000系車両は「青ガエル」という愛称で呼ばれ、忠犬ハチ公像と共に渋谷駅のシンボルとして親しまれている。 ところが昨年夏に車体への落書き事件が発生し、その再発防止策が検討。多くの人びとが集まる秋のハロウィンでは落書きや破壊行為の防止を兼ねて、サンリオのキャラクター「ポムポムプリン」仕様に車体をラッピングした青ガエルが登場し、大きな話題を集めた。さらにカウントダウンイベントが初開催された年末には、「キティちゃん」仕様に変身するなど、今後青ガエルのラッピングが季節の風物詩となりそうだ。

<関連記事>
・「東京都写真美術館」が2年ぶりにオープン(2016/10/11)
・【フォトギャラリー】500年ぶりに古式弓術神事「御的」(2016/7/1)
・澁谷本嫡宗家・澁谷光重さんのインタビュー記事(2016/7/1)


改めて、「2016年の渋谷のニュース」を振り返ってきました。パルコ一時休業や駅周辺の再開発の話題などが目立ち、一見、かつての渋谷の元気がすっかり失われてしまったと感じている人も多いかもしれない。ところが、そんなことは決してありません。「渋谷のラジオ」では渋谷を愛する人びとが集まり、常に「渋谷だけ」の情報を生で発信し続けている。さらに円山町に「LOFT9 Shibuya」、みやしたこうえん前に「東京カルチャーカルチャー」がオープンし、渋谷のライブエンターテイメント性はどんどん加速していているように感じる。SNS時代の今だからこそ、渋谷でしか体験できない「リアル」に価値が生まれる。その最たるものが、秋のハロウィンであり、年末のカウントダウンイベントなのだろう。

今年一年も「渋谷のリアル」をたくさん記録していきたいと思う。

<過去の関連記事>
・「独断と偏見で「2015年の渋谷」を振り返る」(2016年1月3日)
・「独断と偏見で「2014年の渋谷」を振り返る」(2015年1月3日)
・「独断と偏見で「2011年の渋谷」を振り返る」(2011年12月31日)
・「独断と偏見で「2010年の渋谷」を振り返る」(2011年1月7日)
・「ゆく渋谷ゼロ年代、くる渋谷10年代」(2009年12月29日)

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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