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KEY PERSON キーパーソンが語る渋谷の未来

渋谷を中心に活躍する【キーパーソン】のロングインタビュー。彼らの言葉を通じて「渋谷の魅力」を発信します。

エンターテイナーの卵が憧れる街、渋谷にもっと若者がステップアップできる環境を

ハロウィンなどの仮装イベントの定着もあって、今やマニアだけのものではなくなった「コスプレ」。そのコスチュームの製造をはじめ様々なキャラクタービジネスを展開するタブリエ&コスパ・グループ会長の松永芳幸さんは設立以来、渋谷に事業の拠点を置いてきました。松永さんが渋谷に寄せる思いとは。

コスプレは誰もが持つ「変身願望」の表れだ

--タブリエ&コスパ・グループの事業概要を教えていただけますか。

1995年にコスプレパーティーの企画に加え、コスプレ用の衣装を作って販売する事業をスタートしました。そこから徐々に業務を拡大し、今は三つの会社によってキャラクタービジネスを展開しています。まずキャラクターの版権を保持する出版社やゲーム会社からライセンスを取得して、キャラクターのコスチュームやグッズを製造するメーカー「コスパ」。そして、流通を担当する「タブリエ・マーケティング」。さらに、インターネットラジオステーション<音泉>をはじめ、ネットやラジオといった多様なメディアのコンテンツや、プロモーション企画・制作する「タブリエ・コミュニケーションズ」です。僕らの仕事はキャラクターコスチュームやグッズ等のコミュニケーションツールを使って楽しさや感動を増大させ、キャラクターとファンとの間の架け橋になることが設立以来のコンセプトです。

--そもそも、どのような経緯でスタートしたのでしょうか。

個人的にハロウィンパーティーやコスプレパーティーが好きだったのですね。それがエスカレートして仕事にしてみようかと(笑)。日本のマンガやゲームが創出するキャラクターは、質量ともに文句なしに世界一です。その土壌となる特有の文化が日本にはあるのですね。たとえば、週刊マンガ誌はアメリカなどにはありません。それから商業誌の裾野には同人誌のマーケットが広がって、全体のレベルを押し上げている。こうした構造から次々に魅力的なキャラクターが生まれ、それらは海外にも輸出されて愛されているのですね。こうした日本の誇るキャラクター文化を何とかビジネスに結び付けたいと思い、キャラクターコスチュームの制作を思い立ちました。もともと僕はファッション業界の出身で多少は洋服も作れましたから。ただし、当時は特撮用のものはあっても、ファンを対象にキャラクターのコスチュームを制作するメーカーはありませんでした。それだけに先は見えなかったのですが、この分野を究めてやろうと燃えましたね。

--当初の反響はいかがでしたか。

会社を立ち上げる前年、様子を見るために日本各地でコスプレパーティーを企画しました。すると、いずれも大盛況で収益もそこそこ上がった。普通、パーティービジネスは儲からないといわれているにも関わらず、です。コスプレはキャラクターに扮して人々を楽しませる“エンターテイメント”なんですよね。そして自分自身も衣装を作って楽しみ、さらにイベントで着てなお楽しむという楽しみ方を上級者は知っています。それでも難しいものもあるし、着るだけでいいという人もいるから、我々が衣装を提供してサポートしようと思ったのです。ビジネスとしては、コスプレをアニメやゲームのプロモーションにつなげることにも力を入れました。キャラクターの版権を持つ出版社やゲーム会社に「プロモーションのイベントに協力しますよ」と声をかけたのです。それに対してゲーム会社は当初から乗り気で、新作のキャラクターに扮した女性がゲームの説明をしたり、場内を案内したりするイベントプロモーション提案を頻繁に企画するようになりました。

--今では、そういうイベントは一般的になっていますよね。

キャラクターが現実の世界で動くコスプレは、プロモーションには打ってつけですからね。お客さんも楽しめるから入場者数はうなぎ上りで、メディアにも取り上げられるようになりました。そのうちにコスプレイヤーのコンテストなども始まってイベントが大規模化し、他社にも広まっていった。それに伴い、「あんな格好をしたい」というコスプレイヤーたちの願望も高まったのですね。そこで我々は、ライセンスを取得して衣装を制作し、どんどん商品の幅を広げてきました。さらに現在は並行してコンテンツビジネスにも力を入れていて、インターネットラジオの<音泉>では現在毎週40番組以上がオンエアされています。キャラクタービジネスは、業界内のつながりがとても強いのですね。そして関係者は誰もがキャラクターに愛情を持って接している。それだけに、我々も商品やコンテンツに情熱を込めるとともに、業界全体の活性化に貢献するために長期的な視点を持つように心がけています。

--以前に比べてコスプレを楽しむ人は増えていますか。

ここ10年で急速に大衆化していますよ。一部のマニアのものではなくなった感がありますね。ちょっとしたパーティーやカラオケなどで気軽にコスプレをする人が増えたのでしょうね。海外でも同様で日本のキャラクターに扮するコスプレが流行っています。とくに中国ではかなりの勢いで愛好家が増えているようですね。そもそも、「変身願望」は誰もが持っているものなんですよ。いわば人間の根源的な欲求ですね。原始人も、獣の毛皮をかぶって自分を強く見せようとしていましたからね(笑)。

 

渋谷を若者が成功のストーリーを描ける街に

--会社を渋谷に設立した理由は何でしょうか。

コスプレといえば、やはり秋葉原を思い浮かべますよね。当然、選択肢の一つにはありましたが、僕はあえて渋谷を選びました。渋谷というファッションの街からコスプレを発信することで「コスプレ=秋葉原=オタク」というイメージにアンチテーゼを唱えたいと思ったのです。それから、コスチュームの制作で度々お世話になる東急ハンズが徒歩圏内という理由もありましたね。

--松永さんと渋谷との出会いを教えてください。

19歳で上京して、表参道のアパレル系のメーカーで働き始めたのが渋谷との出会いでした。僕は地方の出身ですから、渋谷を通るたびに「今日もお祭りみたいだなぁ」と驚いていましたよ(笑)。その頃は表参道や原宿を拠点にしていましたが、その界隈と渋谷とでは明らかに雰囲気が違うと感じていました。言い表すのは少し難しいのですが、渋谷の人々の意識は外に向いていて、服装も異性を強く意識している印象を受ける。一方、「裏原」などの原宿の奥まったエリアには、個の世界に入っているというか、独自の精神世界を大事にする人々が集っている。だから格好も自分を表現するという意味合いが強い。そんな原宿の空気のなかで、かつては僕も、いかに鬱屈したエネルギーを外部に表現すれば良いのかと考えていましたね。

--渋谷と原宿とでは、若者の過ごし方も違うと感じますか。

そうですね、人の流れ方もずいぶん異なると思います。原宿では、ブラブラと何かを探しながら歩く若者が多いのですが、渋谷ではショッピングや飲食、クラブなど、明確な目的を持って動く傾向が強い。渋谷では、「ついで」にどこかに寄る人が少ないんですね。渋谷に店舗を出店するときには、そういう特性を踏まえる必要があるでしょうね。

--渋谷の中で好きなエリアはどこでしょうか。また、渋谷の魅力は?

よく通ることもあり、ライブハウスの集まるO-East・Westのあたりから東急ハンズまでのエリアが好きです。単館系の映画館やライブハウスなどエンターテイメントが充実していて、年を追うごとに面白くなっているエリアですよね。非常に躍動感を感じます。街全体の魅力を挙げると、やはり若者への情報発信力の強さでしょうか。とりわけ音楽や映画を志す若者にとっては、渋谷は「最終ステージ」になっていると思うのです。「渋谷のライブハウスで演奏したい」といった目標を抱く若者は多いですからね。そのように渋谷には、とにかく若者を魅了し発信するエネルギーに満ちているのが最大の魅力でしょう。

--渋谷の課題は何だと思いますか。

渋谷はエンターテイナーの卵が目指す最終ステージになっているにも関わらず、若者が「ステップアップ」できる環境があまりにも整っていない。そのためには、それぞれの段階に応じたステージがあって、成功へのストーリーが明確に描ける街であることが必要だと思うのです。それは別に特別なものでなくてもいい。たとえば、普通のライブハウスは入場者が場内のカウンターでドリンクを買う仕組みですよね。そうではなくて、入場しない人も気軽に立ち寄れるオープンなバーを併設してはどうでしょうか。きっと従業員にはミュージシャンの卵が集まるでしょうし、やはり同じような境遇の若者が客としてコミュニティを形成するでしょう。また映画館であれば、同じビルに映画関係者が集まれるカフェやイベント会場があるといい。そこで劇団員や撮影クルー、エキストラなんかの募集を行えば、若者がどんどん集まるし、先輩とも交流できる絶好の場所になりますよね。さらに、そういう場所を夜間などの営業時間外に開放し、稽古場として使えるようにしても良いでしょう。そういう場を作ることで、さまざまなレベルの若者が集い、街に「生態系」が形作られていくと思います。

--そのほかに将来の渋谷に望むことは。

街の収益性を高めるためにオトナを呼び戻そうという論議を耳にしますよね。でも、楽しい思い出や感動した記憶のある街でなければ、決して人は戻らないのではないでしょうか。誰の愛着もない街に急に何かを作ろうとしても、それは単なる観光地になる危険があると思います。だから、急がば回れの言葉通り、今、街にいる人を楽しませることが、結果として将来の集客につながると思います。これはコスプレにもつながる考え方ですが、人を楽しませるには、いかに能動的にさせるかを考えなくてはいけない。遊園地だってスーツを着て訪れるのではなく、キャラクターのかぶりものやグッズを身に付けて遊ぶ方がやっぱり楽しい(笑)。そうやって街に入り込ませるきっかけをどう作るか。それを考えていけば、もっと渋谷は楽しい街になるでしょうね。

■プロフィール
松永芳幸さん
1962年福岡県生まれ。アパレル業界でデザイナーズブランドのサポート業務、パリコレの企画室、メジャーリーグの商品企画などを経験したのち、訪米してライセンスビジネスを見聞。94年にコスプレ・ダンス・パーティを各地でプロデュースし、年間約10万人を動員。95年、株式会社コスチュームパラダイスを設立。

トーキョーワンダーサイト タブリエ&コスパ・グループ「タブリエ・コミュニケーションズ」「タブリエ・マーケティング」「コスパ」の三社によって、アニメやゲーム、映画などのキャラクタービジネスを手がける。キャラクターのアパレル・グッズの製造・販売から、コスプレイベントの企画・運営、オンライン・ショッピングモールの運営、カフェの経営、インターネットラジオステーション<音泉>をはじめとしたコンテンツ制作までグループでの業務内容は幅広い。

タブリエ・コミュニケーションズ株式会社

タブリエ・マーケティング株式会社

株式会社コスパ

COSPATIO 渋谷本店
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営業時間:12:00〜20:00
定休日:不定休
ライセンスを取得したオフィシャルキャラクターコスチュームをはじめ、衣装制作に必要なパーツや小物も豊富にそろえ、コスプレイヤーをトータルサポートするコスチュームブランドCOSPATIOの直営本店。

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