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【レポート】再開発で変わる「渋谷のまち」をレゴブロックで再現&子どもと一緒にワークショップ

小学生の子どもたちと一緒に「渋谷のまちをレゴブロックで作る」ワークショップが2019年2月16日、渋谷ヒカリエ8階「8/コート」で開催された。

同イベントは「まちと共に成長していく、未来のまちの担い手である子どもたちに、まちづくりに興味を持ってもらいたい」という思いから、昨年1月に初開催。日本人初のレゴ認定プロビルダー三井淳平さんが約10万個のレゴブロックを使い、大規模再開発で変化する渋谷駅周辺の様子を300分の1のスケールで再現し、高い注目を集めた。昨年に続く2回目の開催となった今回のイベントは、1年間の再開発工事の進捗に合わせてアップデートされたジオラマの公開とともに、小学生参加によるワークショップも実施。そのイベントの模様を詳しくレポートしたいと思う。

【レポート】子ども達とレゴで作る「現在進行形の渋谷の街」(2018年2月2日掲載)

| デフォルメせず、線の一本一本までリアルに再現するこだわり

今回アップデートしたジオラマについて、三井淳平さんに詳しくお話しを聞いた。

「昨年は建設中だった『渋谷ストリーム』は昨年秋に完成、『渋谷スクランブルスクエア』は8割くらい、まだ空き地だった『渋谷フクラス』も3分の2くらいまで建物が出来上がってきましたので、今回はその工事が進んだところを追加しています。新たに約5万ピースを使い、トータル概算で15万ピースの作品にボリュームアップしています」

▲「神」「ゴッド」と呼ばれるレゴ認定プロビルダー・三井淳平さん。

制作に向けた下準備として、三井さんは渋谷駅周辺を地上のほか、渋谷ヒカリエやセルリアンタワーの上層階からも撮影を行い、その枚数は500、600枚にも上ったという。「デフォルメせず、リアルな表現」にこだわりを持つ三井さんは、「約2カ月半を費やした」という制作期間の中で、苦労した点を次にように振り返った。

▲三井さんがレゴブロックで手掛けた渋谷駅周辺の再開発の様子。左から渋谷ストリーム、渋谷フクラス(建設中)、渋谷スクランブルスクエア(建設中)、渋谷やヒカリエ

「渋谷ストリーム(写真一番左)には少しづつずれた模様があり、あの縦線の一本一本の描き込みを完全に再現するため、一番小さいパーツを組み合わせています。見た目以上に多くのパーツを使っていて、通常よりも3倍くらい重いずっしりした作品になりました。同じく渋谷スクランブルスクエア(写真右から2番目)も根元の方は細かく有機的なデザインになっていますので、それをレゴブロックで表現するのに時間がかかりました」

▲秋開設の「渋谷駅東口地下広場」。天井に「渋谷川」が流れている

昨年からのアップデートとともに、今回新たに渋谷駅の「地下空間」も加わった。地下中央の天井には「渋谷川」、右側には縦動線を結ぶ「エスカレーター」、左側には「カフェショップ」が設けられ、今秋に開設する「渋谷駅地下広場」が一足先に披露。
さらに三井さんが手掛けた「渋谷のまち」のジオラマの中に、子どもたちが制作したレゴブロックの人形を加え作品を完成させた。

▲「渋谷駅東口広場」にはカフェスペースもオープンする予定

|「未来の渋谷にあったらいいもの」って何だろう?

ジオラマの公開に併せて、「ミライのシブヤにあったらいいもの」をテーマに子ども向けのワークショップも実施された。事前公募で集まった小学生の子どもたち18人と、お父さん、お母さんを含めた総勢15家族が参加。1テーブルに2家族、計8班に分かれて45分間の時間内で作品づくりを行った。

各班には様々なレゴブロックのパーツが入ったカゴが配布され、そのパーツを使いながらテーマに合った思い思いの作品づくりが始まった。

昨年のワークショップでは、三井さん指導の元で決まった制作物を作るのみであったが、「今年は昨年とは違うことをしたい」(三井さん)という強い思いから完全な自由制作となった。「未来の渋谷にあったらいいもの」というテーマが与えられたが、建物、乗り物、生き物など想定される範囲はとても広く、「初めはなかなか難しいお題じゃないか」と迷いもあったという。「ただ、(再開発で)渋谷のまちはどんどん変わっているので、そのイメージも共有してほしいなという気持ちもあった」と自由制作にした意図を明かす。

▲4歳の女の子もママと一緒に作品づくり▲各班に配布されたカゴの中から、お目当てのパーツを探す子どもたち

いざワークショップを始めてみれば、子どもたちは何のためらいもなく、レゴブロックを組み立て始め、その懸念は一瞬で消えたという。「パーツを探すだけでも時間がかかってしまうが、子どもたちはすごい。想像以上に面白い良いものが出てきている」と三井さんは手応えを強調した。


さて、各班の子どもたちがどんな作品を作っていたのか、具体的にのぞいてみよう。

1班は男の子、女の子ともに「未来のクルマ」を制作。「車の後ろに開くドアを作りたいんだけど、どうすればいい?」という女の子の悩みに、「曲がる蝶番を使ってみては」と三井さんからアドバイスも。

2班は 男の子が「変身する建物」を、女の子が「テラスのあるビル」を制作し、大型作品づくりに挑んでいた。審査員を務めた長谷部健区長は「建物が動くという子どもの発想力がすごい」と感心していた。

▲左)男の子が制作した「公園」 右)女の子が制作した「バス」と、その隣は「空飛ぶサウナ」

3班は「バレリーナを目指している」という女の子が「未来のバス」を制作。「バスの屋根をどう作るか?」など、頭を悩ませながら作品づくりに没頭。バスの隣に付属する「空飛ぶサウナ」(お父さん作)を見て、「さすが大人の発想(笑)」(長谷部区長)と思わずツッコミを入れる場面も。「プログラミングが得意だ」という男の子は「公園」を制作。蝶番パーツを使った「動くブランコが」や「ジャングルジム」「透明なすべり台」など、工夫を凝らした遊具づくりを進めていた。

▲兄妹、両親の家族4人で参加▲左)お兄ちゃんは「変形する家」 右)妹さんは「無人島」

4班はお兄ちゃん、妹さんを含む4人家族で構成される班。「渋谷にオアシスが欲しいので」という理由で妹さんは「無人島」を制作。 無人島内には川があったり、船があったり…、創造力豊かな島に。お兄ちゃんは自由自在にカタチが変わる「変形する家」を制作。制作過程でブロックが崩れるなど「強度」に課題があったが、時間いっぱいまで改良を重ねて強度アップに時間を割いた。「大作を作る場合、強度がしっかりしていないと作品の重さで崩れてしまう」(三井さん)とアドバイスを送っていた。

▲左)野外ミュージカルホールとミュージアム 右)寝ながら移動できる車

5班は、「渋谷にもっと文化施設がほしい」という女の子が「野外ミュージカルホールとミュージアム」を制作。長谷部区長は「パルテノン神殿みたいで、とてもいいですね」と高評価。もう一人の男の子は「寝ながら移動できる車」を制作。「寝ながら…」のアイデアに周囲にいる大人たちから「欲しい! 欲しい!」という声も。屋根部分が取り外せてオープンカーにも変身するという。

▲左)渋谷城 右)渋谷空港

6班は、4歳の女の子とママで「ハート」を、お兄ちゃんとパパで「渋谷城」を制作。「区庁舎じゃないよね? 景色も良さそうだし、ここに住みたいな」と長谷部区長。もう一人の男の子は1階に「電車の駅」、2階に「空港」がある複合施設「渋谷空港』を制作。自ら持ち込みした飛行機を作品上に載せるなど、小技の利いた演出も。

▲男の子が「基地」に装備する機能を説明しているシーン 右)渋谷のまちが「ゲーム会場」に

7班は男の子が「基地」を制作。車輪付き基地からはアームが伸び、様々な作業を行うことができるという。「渋谷のまちをゲーム会場にしたい」という男の子は、スプラトゥ―ンが楽しめるスペースを制作。レゴブロックの裏面をあえて使うなどパーツ使いに工夫が見られた。「プロの技!」と三井さんも絶賛。

8班は「虫好き」の男の子が「ヘラクレス」「クワガタ」「トンボ」など、レゴブロックで巨大な昆虫を制作。大きな虫取り網も表現するなど、男の子の好きな虫の世界が広がっていた。 「渋谷のまちにはスタジムが足りない」というもう一人の男の子は「渋谷スタジアム」を制作。「車輪が付いていて、スタジアムは移動できるのがいい」と審査員からも高い評価を得ていた。

▲お父さんの目も真剣に!親子で集中して作品づくりに取り組む姿

▲レゴブロックの裏面を上手に使う、子どもならではの自由な発想も

子どもがアイデアを発想し、それをお父さん、お母さんも手伝いながら、高い集中力で黙々と作品づくりが進んだ。▲会場中央に「おかわり」コーナーも

万が一、手持ちのパーツが足りなくなった場合は、中央のテーブルに設置された「おかわり」コーナーのパーツを自由に使ってもOK。珍しいパーツや、カラーバリエーション豊富なレゴブロックを前に、子どもたちは目を輝かせながら作品づくりに取り組んでいた。

▲YouTubeなどでもお馴染みの三井さんは、子どもたちの憧れの存在。一緒に記念撮影する姿も

ワークショップの最後には、長谷部区長と三井さんの2人が審査を行い、「区長賞」「三井賞」をそれぞれ発表された。

区長賞:「渋谷城」 西口歩希くん(小1)

▲区長賞に選ばれた歩希くんと妹

「渋谷に昔、渋谷城があったと聞いたので」と城を復活させたいという。工夫したのは城の門が開閉する点や、(敵が攻めてきたときに)鉄砲が撃てる場所などを作ったこと。また、名古屋の「金のしゃちほこ」をイメージした屋根も特徴的。長谷部区長は「未来の建物の中に和風な感じがあるのはいいですね」と評価。歩希くんは「パパも手伝ってくれたから楽しかった」と賞獲得を喜んだ。

三井賞:「変形する家」 勝部爽祐くん(小4)

三井さん手作りのトロフィーを贈呈されて喜ぶ爽祐くん。日ごろからピアノを習っていて、「手先が器用だ」という。今回の作品は、ピラミッド型の建物が自由自在にカタチを変えるという大作。テクニックや工夫を凝らした作品にプロビルダーの三井さんも高く評価していた。

ワークショップに参加した長谷部区長は「大人では出ない発想が面白いですね。みんなで未来の渋谷を想像して、まちに対して思いを持ってもらえれば」と締めくくった。

三井淳平さんが制作した再開発中の「渋谷のまち」は現在、渋谷ヒカリエ11階スカイロビーで展示中!

▲渋谷ヒカリエ11階スカイロビー

窓の外に見える現在進行形の「今の渋谷」を、そのまま再現したレゴブロックの渋谷のまち。本物のまちと見比べながら、その精巧に出来たジオラマのクオリティの高さを、ぜひ実感してください。

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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