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ワタリウムで「古今東西100人展」〜ダライ・ラマ14世から坂口恭平まで〜

ダライ・ラマ14世、バックミンスター・フラー、ジョン・ケージから坂口恭平まで、これまでスポットを当ててきた作家115人を一挙に紹介する収蔵品展「古今東西100人展」が2015年5月30日(土)〜9月13日(日)まで、ワタリウム美術館で開催されている。

同館は1990年にオープン。スイスの建築家マリオ・ボッタが設計した三角柱の建物で、南青山3丁目の交差点からキラー通りを北上すると見えてくるボーダー柄のファサードが目印。地下1階〜1階にミュージアムショップ「オン・サンデーズ」が営業し、地上2〜4階が展示スペースとなっている。

開業以来、国際的に注目を集める現代アーティストを取り上げた企画展を開催。当時24歳だったキース・ヘリングにいち早く声をかけて初の海外展を開いたり、草間彌生の「原点」として60年代にフォーカスした企画を行ったり、震災以来反原発を強く唱えるChim↑Pom(チンポム)にキュレーションを任せたり、作家との関係を強めながら、現代アート史において独自の役割を果たしてきた。

今回で13回目を迎える同館の収蔵品展。会場は、ナム・ジュン・パイクが1993年に同所で展示したブラウン管を使ったインスタレーション作品を皮切りに、主に20世紀の現代アートが展観できる2階、バックミンスター・フラーから坂口恭平まで、デザインや建築を媒体に未来を思い描いてきた作家が時代国籍問わず名を連ねる3階、写真や映像を中心にした4階で構成される。紹介する作家は「これまでで最多」という115人で、作品点数は約250に及ぶ。「古今東西」の作家を一挙に横並びすることで、「見る人の興味によってそれぞれのテーマを見出してもらえれば」と同館担当者。
21世紀を代表する現代アーティストの作品がぎっしりと並んだ2階の会場風景。中央の作品は、ナム・ジュン・パイク「ユーラシアン・ウェイ」(1993)。ウランバートル・蒙古からモスクワまで撮影した映像と、その過程で見つけた無数の日用雑貨で構成されるインスタレーション。
4階に展示される布団の古布を使ったソファ作品「耳栓」(1994年、フランツ・ウエスト作)には、実際に腰掛けることもできる。

中でも印象的だったのは、「こころ・医・チベット展」に合わせてダライ・ラマ14世が同館で行ったレクチャーの記録映像(1995年)、同館の住所である「神宮前3-7-6」の文字が読み取れるジョン・ケージのドローイング(1988年)、故・ワタリウム美術館前館長・和多利志津子さんのポートレートを使った横尾忠則のコラージュ(1981年)など。また、その作品の展示は館内のみに収まらず、同館のファサードには、フランス人アーティストJR(ジェイアール)が手がけたプロジェクトの作品が覆っていたり、同館向かいのお土産店「Hotel Japan」の壁面には、キースへリング(1983)、バリー・マッギー(2007)、JR(2013)などのアーティストが来日の折りにペイントを施していたり、展示全体から同館と作家たちとの強い関わりが見え隠れする。
展覧会「JR展 世界はアートで変わっていく」(2013)以降、同館外観はJRによる作品の一部が残され、独特の雰囲気を醸し出している。
キラー通りを隔てた向かい側の建物「Hotel Japan」には、今までに来日したアーティストたちの足跡が残る。

「収集」や「保存」を主とした伝統的なスタイルに囚われない同館のアプローチがいきいきと伝わってくる同展では、現代アートを求めて会場に足を運び、帰る頃には同館のファンになっている自分に気がつく…。多様化が進む現代アート業界において美術館はどういった役割を果たすべきなのか―― 今回の展示は、その一つの答えでもあるのかもしれない。

アイ・ラブ・アート13 ワタリウム美術館コレクション「古今東西100人展」
〇開催:2015年5月30日(土)〜9月13日(日)
〇時間:11:00〜19:00 ※毎週水曜は21時まで(月曜定休、祝日は開館)
〇会場:ワタリウム美術館 /東京都渋谷区神宮前3-7-6
〇料金:大人1,000円ほか
〇公式:http://www.watarium.co.jp/exhibition/1505kokon100/

編集部・横田

1980年生まれ、神奈川県在住。大学進学を期に上京して以来渋谷はカルチャーの聖地です。現在は渋谷文化プロジェクト編集部に所属しながら、介護士として働くニ足のわらじ生活です。

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