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【レポート】これからの日本的なプラットフォームのゆくえとは?

<イベント概要>
Hikarie+PLANETS 渋谷セカンドステージ vol.7
「プラットフォーム運営の最前線〜日本的インターネットのゆくえ」

〇開催:2015年6月24日(水)19:00〜21:00
〇会場:渋谷ヒカリエ8/COURT
〇出演:
 尾原和啓さん(Fringe81株式会社執行役員)
 北川拓也さん(楽天株式会社執行役員)
 古川健介さん(nanapi 代表)
 高宮慎一さん(グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー/CSO)
〇進行:
 宇野常寛さん(評論家/PLANETS 編集長)

批評家・宇野常寛さんが主宰する文化批評誌「PLANETS」と、渋谷ヒカリエによるコラボレーションで展開するトークセッション『Hikarie+PLANETS 渋谷セカンドステージ vol.7』が6月24日(水)、渋谷ヒカリエで行なわれた。Googleや楽天、リクルートなどを渡り歩き、今話題の『ザ・プラットフォーム―IT企業はなぜ世界を変えるのか?』(NHK出版新書)の著者である尾原和啓さんをはじめ、楽天・執行役員の北川拓也さん、nanapi代表の古川健介さん、グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー/CSOの高宮慎一さんの4人が登壇。宇野さんが司会を務め、「日本的インターネットのゆくえ」をテーマにIT企業の最前線を知る現場目線で、プラットフォーム運営の未来を語り合った。また、尾原さんはシンガポールに滞在中のため、会場にはコピーロボット(ネット中継)がトークセッションに参加した。
写真一番左のコピーロボットからの参加は『ザ・プラットフォーム』著者の尾原さん。

はじめに高宮さんが「資本主義的な濃いコミュニティは、これまで世界に何億人(ユーザーが)いないと美味しくないという感覚があった。今では(組織化された)濃いコミュニティならば少人数でもマネタイズがしやすく、ビジネスとして成立する。そこから新しいプラットフォームの形が見えるのではないか」と今後の「日本的なプラットフォーム」の可能性を提起する。出演者は議論のなかで、既存のプラットフォームを例に挙げ、Googleは「世界」、Appleは「人間」をターゲットにしているとしたら、Facebookはその中間の「社会」をターゲットにしていると分析。コミュニケーションを可視化して管理していくと、 (複数の視点から物事を見られるようになって)人間は解放されて社会は良くなっていくと紹介した。

■日本のソーシャルは空気を読み合う村社会
日本に当てはめて考えると、そのターゲットはFacebookと同じ「社会」に似ているとし、ボトムアップで空気を読み合うような共同体に最適化していくのが、「日本的なプラットフォーム」の一案だろうという。ただ懸念材料もあり、宇野さんは「日本の村社会は空気を読み合ってすごく効率的に動くけども、その一方で全体主義にも陥りかねない。僕の見立てでは、日本のソーシャルはそこまで上手くいっていない。Twitterはでっかいワイドショーですよね。インターネットは分散的なところがいいはずなのに、あれが簡単にテレビ的な全体主義に陥っているのが、今の日本のソーシャルメディア。その全体主義の罠からどう解放するか、というのが課題だと感じている」と指摘し、その解消には「多様性」や「クリエイティビティ」を育てていくしかないと結論づけた。

■「多様性」を生むには、さまざまな「断絶」が必要
その多様性を生むには「断絶すること」が必要とし、北川さんは「人がいっぱい集まってつながり始めると、好かれたいという気持ちが働いて賞賛をもらいたくなる。そうすると、皆が(賞賛を得られる形を目指し)同質化していく。環境を断ち切らないと、基本的に多様性は出ない」と話した。では、ここまでオープンにしてきたコミュニティを、これからどう分断するのか?これに対し、宇野さんは「(そもそも人間なんて多様じゃないので)放っておくとどんどん価値観が一元化していくのは当然。だから、多様化を求めるならば、むしろモノなど具体的なコンテンツを導入して(同質化の)分断を生むべき。ニコニコ動画の強さは『このアニメが好き』とか、常に具体的な対象物があったから。自分の外側にある(趣味など)大事なものに駆動されていたからこそ」という。古川さんも「評価経済では、(賞賛されるFacebookの)“いいね”が集まる投稿に皆が寄っていき多様性がなくなる中で、その解決策が『モノ』というは面白い」と賛同し、「同質化を分断してくれる」プラットフォームの必要性を説いた。
最後に尾原さんは「(分断を作るためには)ユーザー自身の中で、もともと眠っている『モノ』に対する執着とかを上手く引き出してあげること。非言語的なインスタグタムは、写真を重ねていく(まさにモノでつながる)コミュニケーションだと思う」とまとめた。

まだまだ議論し足りないが、ガラパゴスと揶揄される日本であるが、LINEやニコニコ動画など、日本ならではの発想のネットサービスも少なくない。レコメンドでCTR(クリック率)を上げるアマゾンよりも、むしろドンキの棚のような楽天のUIのほうがよっぽど面白い。近い将来、世界を席巻する「日本的なプラットフォーム」が出てくることを大いに期待したいものだ。

<関連記事>
*宇野常寛さん(評論家/ PLANETS編集長インタビュー記事(20150/06/16)
ネット以降の若い感性を持つ社会人と、渋谷の「セカンドステージ」を創造したい。

重野マコト

社会部記者として新聞社に入社後、イベントプランナー、コンテンツディレクター、飲食店経営を経て、現在はフリーライター。インタビューやイベントレポートなどの現場取材をメインに活動する。

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