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「アーバンコアって、何だ?」 渋谷の「谷地形」を克服する仕掛け

まず、「アーバンコア」とグーグルで検索してほしい。検索結果を見れば、お分かりのように検索結果の上位には、渋谷の再開発に関する記事ばかりが並ぶ。では、渋谷と深い関係を持つアーバンコアとは一体何なのだろうか?

シンプルに答えを申し上げれば、渋谷の駅と街、地下と地上を簡便に結び付け、歩行者のスムーズな移動を実現する仕掛けといえる。

「谷」地形である渋谷駅周辺は、「縦動線」に大きな課題を抱えている。たとえば、通勤や通学などで日々渋谷を使う人なら分かると思うが、JR山手線や東京メトロ銀座線から東横線・副都心線を乗り換える場合、なんと7、8階建てのビルの上り下りに相当する労力がかかる。この電車の乗り換えなどに伴うバリアを克服し、縦動線の移動をより簡便にするのが、アーバンコアだ。

ただ、単に縦動線だけの移動であれば、建物内にエレベーターの数を単に増やせば良いという話しになる。ところが、それでは”渋谷らしい”街の回遊性は失われてしまう。地下から地上をつなぐ縦への移動とともに、「屋内(駅・商業施設)」と「屋外」を多層的につなぎ、渋谷の街へ人を送り出す。こうした街の回遊性を高める装置として、アーバンコアが担う役割はとても大きい。

渋谷駅周辺には、既にアーバンコアが2つ存在している。さらに理解を深めるべく、次に今あるアーバンコアを具体的に見ていきたいと思う。まず、1つ目は2012年に開業した「渋谷ヒカリエ」の地下3階から4階までをつなぐエスカレーターホールだ。
この筒状の吹き抜け空間こそが、アーバンコアの第一号である。左上の写真は4階から階下を見下ろしたもの。筒状のアーバンコアの中をエスカレーターが交互に折り重なって地下まで続いているのが、分かるだろう。右上の写真は地下3階からエスカレーターを見上げたもの。
▲渋谷駅周辺動線 立面図(画像提供=東京急行電鉄株式会社)
地下3階で東横線・副都心線の渋谷駅にアクセスし、エスカレーターで地上へ。さらに2階レベルでは明治通りをまたぐ跨道橋につながり、銀座線やJR山手線方面への移動を促す。その一方で反対方向のヒカリエ通路を抜ければ、宮益坂上や青山通り方面への移動を容易にする。
▲左)渋谷ヒカリエのアーバンコア部分。2階から山手線、銀座線方面に跨道橋が伸びている。右)アーバンコア4階に隣接してスカイデッキが整備され始めている。

また将来的な話しであるが、アーバンコア最上階の4階には、銀座線の頭上に整備される空中デッキ「スカイウェイ」ができる計画となっている。この「スカイウェイ」は、渋谷ヒカリエから渋谷マークシティをダイレクトにつなぎ、渋谷駅の東西の移動をよりスムーズにする。今までは幹線道路や線路に阻まれ、どうしても東西で街の分断が起こっていたが、その課題が解消できる。さらに4階レベルでフラットな通路が出来ることで、起伏の激しい渋谷の谷地形を全く意識することなく歩けるのも魅力だ。
▲銀座線の頭上に「スカイデッキ」が出来て、渋谷ヒカリエから渋谷マークシティをつなぐことが計画されている(画像提供=渋谷駅街区土地区画整理事業共同施行者)

続いて、2つ目は9月13日に開業する複合施設「渋谷ストリーム」に隣接するアーバンコアだ。東横線・副都心線の地下3階の渋谷駅改札口から「16番b」出口を目指して進むと、このアーバンコアのエスカレーターに辿り着く。1階レベルで地上へ、2階レベルで「渋谷駅東口歩道橋」「渋谷ストリーム」へアクセスできる。
ガラス張りの個性的なファサードから自然光が差し込み、内部はとても開放的で明るい。
▲2階レベルでは「東口歩道橋」とアクセスする▲全面ガラス張りのアーバンコア
渋谷ヒカリエと異なるのは、商業施設内に内包される機能の一部ではなく、単独のアーバンコアとして存在している点だ。渋谷ストリームが開業すると、渋谷川沿いの遊歩道を抜けて代官山方面へ向かう人びとが増えるが、同アーバンコアは渋谷の東・南方面への回遊を促す起点となりそうだ。

現在稼働中の2つのアーバンコアを見てきたが、「谷」地形を有する渋谷の「縦移動の弱点」を克服する装置が、アーバンコアであることがよく分かる。実はアーバンコアの整備は、渋谷駅周辺の再開発を進める上での前提条件になっている。本格的な開発が始まる以前から、東京大学・内藤廣名誉教授らを中心とする検討会が組織され、再開発のガイドラインとなる「渋谷駅中心地区まちづくり指針2010」をまとめ上げている。その指針の中に街のアクティビティを高める方策として「アーバンコアの整備」が盛り込まれているのだ。
渋谷駅中心地区まちづくり指針2010
▲渋谷駅周辺の再開発完成イメージ(2027年) 画像提供=東京急行電鉄株式会社
先に紹介した「渋谷ヒカリエ」「渋谷ストリーム(南街区)」のほか、現在、渋谷駅周辺では「駅街区(渋谷スクランブルスクエア)」「道玄坂一丁目駅前地区(旧・東急プラザ)」「渋谷駅桜丘口地区」など、複数の大規模な再開発プロジェクトが同時並行で進んでいるが、当然のことながら、どの施設もこの指針を遵守して進めている。商業施設の経済性のみで考えれば、売上を上げない「非効率なスペース」であるが、街の回遊性を優先する“渋谷らしい”試みともいえるだろう。

まちづくりの指針づくりの主要なメンバーの一人である内藤廣名誉教授の10年前のインタビューの中で、アーバンコアについて次にように語っていた。

内藤廣先生インタビューから抜粋(2008/09/26掲載記事より)
駅を中心に網目状に散っていく、この節目みたいなところにアーバンコアというものをいくつか作って、それが渋谷のアイデンティティーの一つになっていく。20、30年経つと、渋谷に行くと、街はすごくごちゃごちゃしているんだけど、どこかに行こうと思ったら、アーバンコアにたどり着けば、そこを経て、いろいろなとこに行けるとか。すごく分かりにくい街なんだけど、どこかにちゃんと行こうと思ったら行ける――そういう街になると思います」  詳しいインタビューはこちら

今後、地下と地上、地上からデッキへと人びとを誘導する「アーバンコア」は、再開発が進むにつれて増えていく。2019年度に完成予定の超高層ビル「渋谷スクランブルスクエア(東棟)」、「道玄坂一丁目駅前地区(旧・東急プラザ)」、2023年ごろに開業予定の「渋谷駅桜丘口地区」にもアーバンコアの整備が計画されている。
▲左)2019年秋に開業を予定する道玄坂一丁目駅前地区(旧・東急プラザ)のイメージパース。右)道玄坂一丁目駅前地区のバスターミナルおよびアーバンコアのイメージ(画像提供=東急不動産株式会社)▲渋谷駅桜丘口地区のアーバンコアのイメージパース(画像提供=東急不動産株式会社)
街の要所要所に立つ商業施設内に基点となるアーバンコアが整備されることで、下記の図のように「ピンク色=地上レベル」のほか、「黄色=2階レベル」「緑色=3階レベル」「青色=4階レベル」が加わり、4層の立体的な歩行者ネットワークのレイヤーが新たに生まれる。
▲渋谷駅周辺デッキ(画像提供=東京急行電鉄株式会社)
今まで「迷路」と揶揄されてきた複雑な渋谷駅が、 分かりやすく歩きやすくなるのではないだろうか。

新しくできる商業施設と共に、アーバンコアにも注目してみてもらいたい。

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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