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KEY PERSON キーパーソンが語る渋谷の未来

渋谷を中心に活躍する【キーパーソン】のロングインタビュー。彼らの言葉を通じて「渋谷の魅力」を発信します。

レンタルオフィスの入居者に接していると 渋谷と起業家との相性の良さを感じます。

渋谷区円山町にレンタルオフィスを運営し、ITベンチャーをはじめとした起業家をサポートするアントレサポート。自らも若干24歳で起業を果たした鈴木友華さんは、渋谷と起業の相性の良さに着目し、渋谷での事業展開を決めました。日々、渋谷を舞台に奮闘する数多くの起業家と接する鈴木さんが語る渋谷の魅力や課題とは。

思い切って物件を買い取って、レンタルオフィスをオープンした

--鈴木さんの起業までの経緯を教えていただけますか。

服飾系の専門学校を卒業し、広告代理店や不動産会社に勤めたあと、24歳の時にエス・ジェイプラニングを設立しました。当初は広告代理業や不動産管理が中心でしたが、自らの経験から「渋谷に気軽に借りられるオフィスがあるといい」というアイデアが浮かび、2000年に現在のアントレサポートへと社名を変更して、渋谷でレンタルオフィスを始めたのです。今でこそ渋谷には10社ほどのレンタルオフィスがありますが、当時、周りに同業者はいませんでした。当初は賃貸物件で運営することも考えましたが、受付業務などの人的サービスも提供すると、どうしてもレンタル料が高くなってしまう。そこで現在の場所を買い取ることで低価格でのサービスを可能にしました。今振り返っても、我ながら思い切った決断だったと思いますね(笑)。

--渋谷を選んだ理由は何だったのでしょうか。

当時の渋谷は「ビッドバレー」のブームのさなかで、IT関連の若い起業家が集まっていました。私自身20代でしたから、そうした若い世代の起業家を応援したいという思いがあって。その頃に比べると少し落ち着いた感はありますが、今でもIT関連の起業家にとって渋谷の人気は根強いようです。当初、お客様は20代30代の方が中心でしたが、ここ5年ほどで40代以上の方が増えて半数以上を占めるようになりました。中には60代の方もいますし、現在は75歳の方が最高齢ですね。そうした背景には、渋谷という街の質的な変化があると思います。昔から若者の街というイメージは変わりませんが、近年、渋谷マークシティやEスペースタワーなどが相次いでオープンし、ビジネス的な要素が強まりました。そのため、昔なら「渋谷は若者しかいないから」と敬遠していた世代の方々が集まるようになったのだと思います。最近の入居者にはIT関連のほか、人材派遣業やフィナンシャルプランナーなども目立つようになりました。そのように渋谷での起業が後を絶たないのは、文化的な要素が集積する地域性や交通の便の良さに加え、住所に「渋谷区」と書けることによる信頼性など、さまざまな要因があるのでしょう。「渋谷と起業は相性がいいな」と、つくづく思いますね。

--どのような点に仕事の面白さを感じますか。

私どものレンタルオフィスは、ステップアップの準備期間として使用してもらいたいと思っています。1 年間くらい入居されて準備が整ったら、ここを卒業していかれるお客様が多い。不思議なことに、その後もやはり渋谷でオフィスを探して、移っていかれるケースが多いんですよね。以前、2、3人の社員で入居していた小さな会社が成長し、近々、上場する予定があるという話を、先日、聞いた時には「お役に立ててよかったな」と、心から嬉しく思いましたね。別のオフィスに移られた方の中には、「初心を思い出したい」と時々、ここを訪ねてくる方もいらっしゃいます。さらに、お客様同士がタイアップして新たな事業が生まれた時にも、やはりお役に立てたことを実感できる瞬間です。お客様から「こんな業種の会社を探している」という相談を受けると、他の入居者を引き合わせたりもさせて頂きますし、毎月、新たな入居者を紹介するコミュニティーペーパーを配布することでも、お客様同士の交流を促しています。

--他のレンタルオフィスとの差別化のために心がけていることをお話ください。

当社のスタッフはすべて女性です。そこで、人的サービスにも、設備面にも、女性らしいきめ細やかな気遣いを発揮できるように心がけています。入居者には男性が多いのですが、その媒介として当社の女性スタッフが入ることで、柔らかい空気が生まれることがあると思うんです。そういう方向性を強めることで、入居者にますます喜ばれるサポートを目指しています。

「ビジネスの街」としてのイメージがもっと強まるといい

--鈴木さんと渋谷との出会いを教えてください。

私は吉祥寺生まれの杉並育ちで、渋谷には高校生の頃から洋服を買いに来たりしていました。ショッピングや食事、アミューズメント施設など、何でも充実している一方で、少し奥に入ると静かな空間が広がっている。そんな不思議な魅力にひかれて当時から通い続けています。一見、新宿や池袋と似た大都市のようにも思えますが、やはり渋谷には独特の面白さが備わっている。そんな街全体のイメージは昔から変わりませんが、今、レンタルオフィスを構えている円山町の界隈は、すいぶんとイメージが変わりました。以前は、「円山町」というとホテル街としてのイメージが強かったのですが、最近はおしゃれな空間として変貌を遂げつつあります。2000年に「渋谷マークシティ」ができて、道玄坂上からの人の流れができたことも、このエリアを大きく変えたと思います。

--渋谷の街への提言はありますか。

個人的にはとても満足度の高い街ですが、起業という視点で見ると、行政などによる助成や勉強会がもっと充実していてもいいかなと思います。横浜市では起業1年目の会社への助成があるなど、サポート体制を整えている市区は少なくありませんからね。渋谷は「ファッションの街」「クリエイターの街」として広く認知されていますが、まだまだ「ビジネスの街」というイメージは弱いと思います。オフィスビルやホテルなどのハード面は徐々に増えていますから、サポートなどのソフト面の充実化が今後の課題ではないでしょうか。

■プロフィール
鈴木友華さん
1971年東京生まれ。服飾系専門学校卒業後、広告代理店や不動産会社に勤めたあと、1995年に広告代理店・不動産賃貸業としてエス・ジェイプラニングを設立。1999年にアントレサポートへと社名を変更し、レンタルオフィスの運営を中心に、経営コンサルティングや広告代理業、保険代理業など幅広い事業を展開する。

株式会社アントレサポート

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