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KEY PERSON キーパーソンが語る渋谷の未来

渋谷を中心に活躍する【キーパーソン】のロングインタビュー。彼らの言葉を通じて「渋谷の魅力」を発信します。

プロフィール

1986年大阪府生まれ。青山学院大学在学中、社会起業プロジェクト「SOL」の代表及びシブカサの立ち上げにかかわる。大学4年次より半年間、中国の投資コンサル会社に就職。半年後に退職して帰国しシブカサ代表となり、2011年1月、シブカサを一般社団法人化。活動の充実化に向けて新たな取り組みをスタートさせている。

ボランティア活動への参加で渋谷の良さに初めて気付いた

--末原さんと渋谷とのかかわりを教えてください。

初めて渋谷に来たのは、青学の受験の時。大阪府の岬町という、田舎過ぎて大阪の人ですら知らない土地の出身です(笑)。海と山しかないけど、人が温かい良いところですよ。そんな街から出てきましたから、最初は渋谷が苦手でした。チェーン店ばかりで、ゴミゴミしていて、ギャルばっかりで。だから学校が終わったら、すぐに住んでいた池袋に帰っていました。池袋には失礼な言い方かもしれませんが、あの街は埼玉県など東京の周辺から移ってきた人たちが多くて、どこか田舎者の私の感覚に合ったんです(笑)。そんな渋谷に対するイメージが変わったきっかけが、大学2年の時に渋谷の街なかのゴミを拾うボランティア活動のgreen bird(グリーンバード)に参加したこと。意外とゴミが落ちていないな、というのが第一印象でした。しかも、代表の長谷部さんによると、年々ゴミは減ってきているそうです。ゴミ拾いという活動を通して街にコミットしたことによって、渋谷はゴミゴミしていて荒れ放題という勝手なイメージを抱いていたことに初めて気付いたのです。それからですね、渋谷の良さに目が向いて、「自分もこの街のために何か出来ることがないか?」と思い始めたのは。街を使っている時点で、「自分の街」だと思うんです。だから私は、渋谷を大事に使いたい。私がゴミ拾いを通して体験したように、傘を貸し借りするというコミットが、みんなにとっても街に対する思いを深めるきっかけになってほしいと思っています。

--渋谷の魅力は、どのような点にあると思いますか。

駅を起点に街が面のように放射状に広がっているところです。フラットな街をぶらぶらと歩いて、いろいろな店を見て回る楽しさがある。個人経営の小さいお店がたくさんあって、どこかが突出していないゆえの面白さも感じます。他の街だと、そうはいかないですよね。新宿も池袋も駅ナカで用を済ませられることが多いし、街に出ても目的地との間を直行直帰してしまう。こないだ、祖母が上京した時、明治神宮でお参りをして、原宿を抜けて代々木公園を歩き、表参道で食事をしてきました。もう83歳なんですけどね(笑)。そんなふうに歩くことを楽しめるのは、渋谷の魅力ですよね。他の街は、それだけ歩いたら疲れてしまうと思います。訪れる人も和やかで、ふわりとした感性で街を楽しめる人が多い気がします。

--渋谷以外の都内の大都市で、シブカサと同じ活動をすることを考えたことはありますか。

ないですね。渋谷でしか考えられない理由がいくつかあります。まず、地中に川が流れている関係で地下道が少なく、雨が降っても地下に逃れられない。それに駅から離れた場所に小さなお店が点々と存在するのも、シブカサが重宝されやすい理由です。そして、これは活動を進めるにつれて実感したのですが、地元の方々が非常に協力的なことに、とても助けられています。町会の方々などが「どんどん広げなよ。紹介するから」と、向こうから声をかけて下さるんですね。他の街なら、地元のお偉方への根回しが必要になりそうですが、渋谷は新しい取り組みに対してオープンで排他的な面が全くありません。チェーン店などの実験店が渋谷に出されることも多いですよね。きっと新しいことにチャンレンジしやすい街だからなのでしょう。その理由としては、新陳代謝の早さが大きいと思います。渋谷では、大体、6年から8年くらいで人が入れ替わると聞いたことがあります。16歳から22歳くらいの若者が通過していくイメージでしょうか。人や街がつねに変化しているから、新しい試みも自然に受け入れられるのでしょう。

ポジティブなメッセージを伝えるビジネスのしくみを模索したい

--現在の渋谷の街とのかかわり方は?

今はオフィスが渋谷にありますから、毎日、来ています。いろいろな人と知り合うために、夜な夜なバーやカフェなどに行っていますね。バーのカウンターで隣り合わせになった人と話が弾むこともよくあります。最近、演劇にもはまっていて、オフィスがある渋谷区文化総合センター大和田に入っているホールにもよく行きます。今度、観世能楽堂にも行ってみようかと。そういう文化的なものも多いし、一人で落ち着くのにぴったりのカフェもあるし、みんなで騒ぎたいならチェーン店に行けばいい。つくづく選択肢の多い街だと思いますね。実は最近、猿楽町に引っ越したばかりなんです。それまで下北沢に住んでいたのですが、これだけ渋谷に浸かっているのだから、渋谷の中に定点として住居を構えなきゃいけないな、と思うようになりまして。たぶん、渋谷住人になることで街に対する見方がまた大きく変わると思うんです。いつかは大きな家を借りて、外国人も受け入れるオープンなシェアハウスにするのもいいなと計画しています。

--今の渋谷に「あるといいな」と思うもの、また今後も残してほしいものは?

ひばり号でしたっけ、戦後の一時期、今のスクランブル交差点のあたりで運行していたロープウェイ。ああいう遊び心のあるモノがあると楽しいのでしょうが、やっぱり今は難しいんですかね。先ほど、選択肢が多いことが渋谷の魅力と話しましたが、今後もいろいろな要素を残して欲しいですね。街の中に違いがあるから魅力が出てくるわけで。センター街のガヤガヤした雰囲気も、桜丘町のひっそりとした感じも、どちらも好きです。ただ、見る人によって、印象は変わるんですよね。桜丘町にしても、年配の方の中には国道246号によって街が分断されて発展から取り残されていると見る人もいる。開発の際には、若者の視点も忘れないでいただきたいですね。

--これからの目標をお聞かせください。

最終的には海外でビジネスをしたいです。一時期、中国に出ていって日本の良さを再確認して戻ってきたわけですが、国内でシブカサの活動を成功させたら次は海外で何かを、という気持ちがあります。自分がビジネスをやりたい原点には、漠然とした言い方ですが「ポジティブな何かを人々に伝えたい」という気持ちがあります。ちょっと話が変わりますが、高校時代、インターネットビジネスをしていて、けっこう稼いでいた時期があるのですが、文字と会話をし過ぎて完全なネット人間になってしまったんですね。面と向かってのコミュニケーションの取り方を忘れてしまった感じで。それって決して幸せな状態ではありませんでした。本来、コミュニケーションにおいて言語が占める割合はそれほど大きくなく、声の抑揚とか表情とかフェイス・トゥ・フェイスで伝わる要素が大事ですよね。にもかかわらず、最近、うつむいて一人の世界に入り浸って携帯電話のゲームをしている人が増えているのを見ると、考えさせられるものがあります。私が人間的なコミュニケーションを取り戻せたのは、人が人のことを思う気持ちで成り立つシブカサの活動が大きなきっかけでした。シブカサのキャッチフレーズは、“No rain, No rainbow(雨が降らなきゃ、虹は見られない)”。気分が沈んでしまいがちな雨だって、考え方しだいでは楽しい気持ちになれる。まずは傘というツールを通して、少しでも多くの人々が幸せな気分になれるようなメッセージを発信していきたいです。

一般社団法人シブカサ

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