今回の「シブヤ×ブックス」は、青山ブックセンター本店のビジュアル書担当・渡慶次真矢さんがブックセレクターとなり、芸術の秋に楽しみたいアート関連書3冊をピックアップしてもらった。
雑誌のコンセプトは、「日々の暮らしを色々な角度から眺めて、この時代の豊かさの意味を考えよう」。装丁や紙は、毎号、内容に合わせて大きく変わる。編集長は、ギャラリスト兼編集者の菊竹寛。
<渡慶次さんのオススメポイント>
生活文化誌と謳ってはいるんですが、内容的にはアート寄りのカルチャー誌です。年4回発行されており、大まかな構成は、特集記事と、著名人によるコラムやエッセイなど。箱装で、製本も中綴じ、4色の紙を使い分けるなど、書籍そのものがアートで、刺激的です。タイトルも独特で、同じ音でまったく意味の異なる言葉、「疾駆」=「早く走らせる」と「シック」=「上品」を掛け合わせるセンスのよさを感じさせます。1号から6号までの特集は、「場所」や「地名」にフォーカスしたものでしたが、最新号である7号は、「人」をテーマに、テキスタイルデザイナーの「ヨーガン・レール」を取り上げています。内容はもちろん、プロダクトとしてのおもしろさを実感できるので、ぜひ店頭で手に取ってもらいたいです。
2015年刊行の「世界地図の間(ま)」の続編劇画。極北の高緯度地帯を舞台にした物語。続編「花園」(仮題)が存在するが製作時期は未定。
<渡慶次さんのオススメポイント>
横山裕一さんの新刊です。当店では、コミックコーナーのみならず、アート棚のコーナーにも置いています。一般的なコミックと違い、ストーリーを楽しむというよりも、コマ割りによる「時間の流れ」を楽しむ要素の強い作品です。時間を表現するために、一コマ一コマが限られた言葉や擬態語、擬音語のみで描かれていて、限られた線のみで描きつつも、腕時計など、部分的に非常に細かい描写がなされている。シンプルだけと、何度も読んで楽しめる一冊です。近未来的な設定や、キャラクター造形も独特でおもしろいです。当店トークイベント等でもお世話になっている服部一成さんがブックデザインを手掛けているのもポイントです。
現代美術に新しい価値観を提示し続ける画家・大竹伸朗が、80〜90年代にさまざまな媒体に書いた文章をまとめたもの。文庫には、新作を含む木版画30点、カラー作品、未発表エッセイを収録。
<渡慶次さんのオススメポイント>
芸術家・大竹伸朗さんが、東京から愛媛県の宇和島に移り住み、芸術家としての活動を続けながら書き綴ったエッセイをまとめたものです。大竹さんは、作品のジャンルは幅広く、表紙の版画もそうですが、絵画、インスタレーション、音楽、絵本、Tシャツも作る。それらの作品ももちろんすごいのですが、個人的には本書に垣間見えるアーティストとしての姿勢にとても魅かれます。現代のアートは、コンセプトありきで芸術を表現するという傾向にあると思うのですが、大竹さんは、何かにあらがって作品を作っていくのが芸術家である、というスタンスなんですね。どんなに大変でも好きだったらできるでしょ、そういうエネルギーのもと、作品を作り続けている。読むだけでパワーをもらえる1冊です。
取材・文/ 田賀井リエ(代官山ひまわり)