今回の「シブヤ×ブックス」は、トリガー店長でコンシェルジュである兎来栄寿さんがブックセレクターとなり、「2017年の大注目のマンガ」を3冊ピックアップしてもらった。
最初のマンガとの出会いは幼少時に読んだ「ドラえもん」。その後、「コロコロコミック」「ジャンプ」を始めとする少年誌から、「リボン」「なかよし」「ちゃお」「別コミ」といった女性誌まで幅広く読み漁り、10 歳の頃から神保町やまんだらけに通い詰める。少年青年少女漫画から BL・百合まであらゆるジャンルを愛する生粋の漫画愛好家。漫画を読むのは呼吸と同じ。自分を育ててくれた漫画文化に少しでも恩返しすべく、日々様々な作品の布教活動を行うマンガソムリエ。
週刊少年ジャンプで連載中なのですが、ジャンプらしくないブラックな内容といった点でも話題の作品です。ストーリーは、小さな孤児院に住む子どもたちが主人公の脱獄ファンタジーです。孤児院の敷地内からは外に出てはいけないという決まりがありつつも、平和に暮らしていた子どもたちなのですが、ある日、孤児院の中でも特に優秀なトップ3の子ども、エマ、ノーマン、レイが孤児院に隠されたとんでもない秘密を知ってしまいます。シスターに気づかれないように何とかしてここから脱出しようという展開が1巻です。1話1話に緊張感があって、毎回ドキドキさせられます。「デスノート」などの頭脳戦マンガが好きな人にもおすすめです。
「このマンガがすごい!2015」オトコ編第1位を受賞し、昨年映画化された傑作「聲の形」の大今良時先生が描く最新作です。前作「聲の形」とはまた世界観ががらりと変わり、今回は架空の世界を舞台にしたファンタジー。最初のページに登場する“謎の球体”が話の中心になります。この球体がいろいろな植物や鉱物、人間などの生命体に宿り、いろいろな情報を吸収し学習していく。1巻の段階では全容は見えず、あくまでもこれから始まる壮大な世界のプロローグにすぎませんが、これからおもしろいストーリー展開が待ち受けていることを予感させる内容です。絵の表現力もすばらしいので1コマ1コマ、じっくりと味わってもらいたいです。
1話を読んだだけで、とんでもない漫画家がでてきたなと驚かされた人も多かったのではないでしょうか。世界観としては、「ケモナー」と呼ばれる人間のように動いて話す獣が登場するマンガが好きな方々が喜ぶ作品ですが、作品自体に魅力がたくさんあり、ケモナーのみならず幅広い人に受け入れられる作品ではないかと思います。内容は、学園もので、学校を舞台に、肉食動物と草食動物の確執を描いています。草食動物は肉食動物に襲われるのではという不安を常に抱えて生きていますし、一方、肉食動物の中でも、主人公のオオカミはおとなしく穏やかだけれども、草食動物を見ると、心がざわつく。そのシーン描き方やネームがすばらしくうまい。今後の展開が楽しみです。
取材・文/ 田賀井リエ(代官山ひまわり)