今回のブックセレクターは、代官山 蔦屋書店の「旅行」コンシェルジュ・権正恩さん。「春をイメージする本」で選んだ「青春の旅」の10冊のうち、3冊をピックアップしてもらった。もうすぐ春、この3冊を胸に素敵な旅を計画してみませんか?
3つの建物から成る「代官山 蔦屋書店」。その3棟を貫く5メートルの「マガジンストリート」をインデックスとして両脇に「人文・文学」「アート」「建築・デザイン」「クルマ」「料理」「旅行」の6つのフロアで構成される。コンセプトは「本、映画、音楽を通してライフスタイル提案をする『大人のための文化の牙城』」。居心地の良い空間で、幅広い世代に人気だ。
東京の無料スポットを100カ所、紹介するガイドブック。「東京藝術大学奏楽堂モーニングコンサート」「池波正太郎記念文庫」「池上本門寺人生相談」「自衛隊見学ツアー」など、穴場スポットが多数掲載されている。
<権さんのオススメポイント>
私自身、大学の時に東京へ来てからというもの、もう10年以上経つのですが、東京という街はとてもおもしろくて、飽きることがありません。そんな東京の魅力がぎゅっと詰まったのがこのガイドブックです。春には上京してくる方も多くいらっしゃると思います。特に学生さんは、あまりお金がないかもしれません。けれど、驚くべきことに、東京には無料で楽しめる魅力的な場所がいっぱいあるんです。当店には、地方から上京されたお客様も多数足を運んでくださるのですが、そんな方々にも好評です。渋谷区も「香林院」の無料座禅会など、いくつかユニークなスポットが紹介されていますので、ぜひ手に取ってみてください。
パリで懸命に生きる日本人10人に焦点を当てたルポルタージュ。ミシュランに載るような三ツ星レストランで修行している人、アーティストを目指している人、オペラ座で漫画喫茶を開いた人、花屋さんで働く人など夢に向かって生きている人たち――それぞれの人生を鋭い洞察力としなやかな文章力で描く。
<権さんのオススメポイント>
「私も頑張っていこう」と思わせてくれるそんな一冊です。内容は、著者の川内さんがパリに住む日本人に会いに行き、取材をし、まとめたもの。タイトルの意味でもある、「パリで生計を立てている」人たちが、どんな気持ちで、何を夢見てパリで生きているのかが十分に伝わってくる内容となっています。旅行先を選ぶときは、どうしても「場所」ありきとなりがちですが、魅力的な「人々」がいる場所は、その「場所」も魅力的な気がします。この本を読むと、この人たちに会いたい、だからパリに行ってみよう、という気持ちにさせるおもしろさもあります。これから春を迎えるにあたって、自分の進むべき道について悩んでいる人にも、ぜひおすすめしたい一冊です。
地元・しまなみの自転車乗りである著者が手掛ける、しまなみ海道を自転車で旅する人向けのガイドブック。観光情報や、レンタサイクル情報、サイクリングロードの走り方など、しまなみ初心者から上級者まで役立つ情報が満載。
<権さんのオススメポイント>
広島・尾道市から愛媛・今治市を走る「瀬戸内しまなみ海道」を自転車で横断するための旅行ガイドブックです。この本はNPO法人シクロツーリズムしまなみが自費出版で作った本なので、一般書店ではあまり見かけないかもしれません。昨今、自転車ブームですが、実は、しまなみ海道のガイドブックってあまり出版されていないのです。この本の中には、しまなみ海道を結ぶ各島の「行く」「見る」「食べる」情報がたっぷり載っているので、旅行前の必読書と言えます。しまなみに行ったことのある人によると、春に行くのがベストとか。波の音や風の香りを感じ、パノラマ風景を楽しみながら、自転車で島巡りをしてみてはいかがでしょうか。
取材・文/ 田賀井リエ(代官山ひまわり)