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KEYPERSON

渋谷は「日本のニューヨーク」
ハイソなエリアも、下町的な場所も

アメイズビューティー・代表取締役CEO石原久真子さん

プロフィール

石原久真子(アメイズビューティー・代表取締役CEO)

北海道旭川市出身。カネボウ化粧品勤務を経て、フリーのメイクアップアーティストとして活動。ニューヨーク滞在時にコスメブランド・NARSの斬新さに衝撃を受け、帰国後、NARS JAPANに入社。2005年、退社してアメイズビューティーを設立。同年冬、徹底した消費者目線で開発したオリジナルブランド「ヒートジュエルリップグロス」を発売し、20〜30代の女性を中心に大きな話題となる。同じコンセプトで開発した「ヒートジュエルマスカラ」も女性のニーズを的確に捉え、ヒット商品に。オリジナルブランドの企画・販売のほか、女性向け商品開発のコンサルティング、PRなども行っている。

消費者視点でのコスメを創って世の女性のお役に立ちたい

--起業する前は、メイクアップアーティストをされていたということですよね。

中学生の頃までは勉強がとても得意で、東京の大学に進学したいと思っていました。でも、両親はお堅いタイプで、一人娘を東京に出すなんてもってのほか、旭川の大学に進学しろ、と。それに反抗して高校は進学校に進まず、国立工業高専を選んだんです。ところが、文系頭の私は「やっぱり芸術系の勉強をしたいなぁ」と、かなり悩みましたね。そしてその後、ハタチになり就職活動をした際に、地元で一般職の内定をもらいました。両親を安心させるにはぴったりの就職先でしたが、決して自分の進みたい道ではなかった。それなら、何がやりたいのか。そう何度も自問するうちに、幼い頃から絵が好きだったこと、中学校時代に演劇部でメイクを担当していたのが楽しくて、「自分はこういうことが得意だな」と感じたのを思い出し、「ファッションやメイクの仕事をしよう」と決意したんです。ちょうど20歳になった頃で、一般職の内定を蹴り、家を飛び出しました。両親は大反対でしたが、一度、距離を置かないと良い関係になれないだろうという思いもあって。それで、いくつか化粧品会社を受け、カネボウ化粧品に入社しました。

--カネボウ化粧品では、どのような仕事をされたのでしょうか。

百貨店に配属されて美容部員をしました。メイクの仕事は本当に楽しくて、毎日時間を忘れるほど夢中で働いていました。何が楽しいのかというと、女性にメイクをして綺麗にしてさしあげると、一気に明るい表情に変わっていただけることがあるのです。それが嬉しくて。2年ほど夢中で働いて22歳になった頃、「メイクの仕事を続けるのなら、やはり東京かな」という気持ちが強まり、住む場所も決めずに上京。ところが、東京でテレビドラマのロケなどでメイクの仕事をさせてもらううちに、「何かが違う」と気づいたのです。ロケではディレクターの指示に沿って女優さんを綺麗にします。その結果、媒体を通して見る人が、「この女優さん、綺麗」と思うことはあっても、その女優さん自身が新しい発見をするということがメインというわけではありません。そういう仕事も楽しいのですが、私が本当に好きなのは、女性のメイクの悩みに応えたり、良い部分をもっと引き出すための方法を考えて美しさの役に立つということだったんですね。それに気づいた後は、少しモラトリアム気分で、お金を貯め、海外へ。中でもニューヨークが気に入り、しばらく滞在するうちに、NARS(ナーズ)という化粧品ブランドに出合いました。その斬新さに打たれ、「このブランドで働きたい」と思って帰国。その後、採用となり働き始めました。

--そこから起業するまでは、どのような経緯があったのでしょうか。

沢山の日本女性にメイクをして悩みに応えたりしながら、やりがいをもって仕事に取り組んでいました。そんな中で、白いキャンバスにはどんな色も映えるけれども、日本人の黄味がかった肌には少しくすんだ色味の方が肌をきれいに魅せるなど、現場ならではの気付きやリアルなニーズをいろいろ発見しました。

そんな時、無念にも病気をして長期間入院することに。治療中にたくさん時間が出来て、化粧品について、仕事について、じっくりと考えるうちに、「現場の知識を凝縮した消費者視点でのコスメを創ってより多くの世の女性の美しさのお役に立ちたい」という思いに駆られました。それで早速、工場に電話をしてみましたが、法人ではないから、まったく相手にされない。それで退院して少ししてから退社し、貯金をはたき、メイクアップアーティスト仲間からも出資をうけて起業したんです。このとき実は両親には内緒でした(笑)。しかし、当然ながら、経営について何も知らない26歳でしたから、商品開発は難航しましたね。他社の化粧品のパッケージに書かれていた製造工場に片っ端から連絡して相談に乗ってくれるところを探し、デザインもイチから勉強しました。資金のほぼすべてを使い果たし、ようやく6色のリップグロスを完成させましたが、店に置いてもらうまでがまた大変――。大量すぎる在庫を前にして、「やめとけばよかった」と何度も思ったものです。

スペック重視は男性脳の考え方。「共感」こそが女性に訴えかけるポイント

--それでも、商品には自信があったのではないかと。

もちろんです。どの色も、それまでは存在しないタイプの色でしたが、日本人の唇にぴったりだと確信していました。たとえば、紫とオレンジをミックスした「万能色」は、紫でくすみが消え、オレンジでほんのり色づき、ベージュに発色するというもの。さらに、リップクリームを塗るのと同等以上の質感の良さにも自信がありました。初めて商品を置いてくれたのは、新宿アルタ内の化粧品コーナー。忘れもしない、2005年冬のことです。大々的な宣伝はしていませんでしたが、しだいに売れ行きが伸び、半年後にはヒットと言ってよい状態になりました。その後、開発したマスカラは最初に関西で人気に火が付いて関東でも売れ始めました。当社の化粧品のコアターゲットは20〜25歳ですが、実際の購入者はもっと幅広いですね。これは、最近、ファッションの壁がなくなりつつあるからでしょう。たとえば、一見、コンサバ系に見えるOLさんが、口元はギャルのようにヌーディーにするなど、自分の感性で自由におしゃれをする人が増えているのを感じます。

--パッケージにも、かなり工夫をされているそうですね。

まず、一般的な化粧品と大きく違うのは、普通は最初に書かれている製品説明が最後にあること。これは、スペック的な情報を最初に求めるのは男性脳だと思っているからです。さらにパッケージ表面には「満足してる? その唇。」と大きく書いてあるのですがこれは現状のリップメイクに満足していない人に、裏面の説明を読んでみたいと思っていただくために表記しました。そして裏面では、メイクアップアーティストがメイクを完成させる際には、1色の色を作る為にたくさんの色をブレンドすることが多くある、といったようなリアルな現場のこと、さらにその流れでこのグロスでどのような悩みを解決できるかなどを説明しています。きっとリアルな話には共感してくれる女性は多いと思うのです。この「共感」こそが、女性に何かを訴えかけるうえでの大きなポイントだと思います。パッケージに文字を多めに書いているのは、セルフ販売であり、美容部員による説明がないため。私は、今の日本女性は感覚のレベルがすごく高いので、セルフ販売でも十分に自分に合ったものを選べると考えています。

--今後の夢や目標を語ってください。

たくさんの価値を創出したい、ということですね。起業した最大の理由は、女性の役に立ちたいという想いでした。役に立つということは、喜ばれる価値を創出することだと思います。そして、その価値がどれくらい皆さんに喜んでいただけたかが、お金に換算されるものだと思います。たとえば、当社の商品はどれも効果が高い成分を配合し、原価は非常に高いのですが、頑張って、お手ごろ価格に抑えています。この商品のもつ「価値」は、きっと喜んでいただけるし、皆さんの役に立つことができると信じています。

株式会社アメイズビューティー

女社長 石原久真子のオフィシャルクマブログ

アメイズビューティーの大ヒット商品:
「HEAT JEWELリップグロス」

石原さんが美容部員時代に培った知識や感性をもとに、日本人に合う色味・質感を研究して生み出したこだわりの色展開。ラッピング効果により、つけるたびにトリートメント成分が浸透しうるうるの唇に。密着度が高く、落ちにくいという点も人気の理由。

さらに今秋、スキンケア商品「Tamary(たまりー)を発売予定。砂漠の緑地化などへの応用が期待されるほどの脅威の保湿力を持つ成分を配合し、防腐剤にキムチエキスを使用した日本発オーガニック美肌液として早くも業界で話題をよんでいる。

»HEAT JEWEL

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