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今注目の傘シェアリングサービス、渋谷発「アイカサ」は定着するか!?

タクシーの配車サービス「Uber(ウーバー)」や民泊の仲介サイト「AirBnB」など、稼働していない「遊休資産」を、それを欲する人びとへ届ける「マッチングサービス」は昨今、「シェアリングエコノミー」と呼ばれて急速に成長を遂げている。こうした市場拡大の背景には景気後退や環境問題、インターネットの普及等が影響しているのはもちろんだが、モノに溢れた消費型の経済に限界を感じ、「個人所有」から「共有(シェア)」に新しい価値やライフスタイルを見出す人びとが増え始めていることも大きな一因だろう。

特にベンチャー企業が多い渋谷では、「荷物を預かるスペースを持つお店」をつなぐ荷物一時預かりのシェアリングサービス「ecbo cloak(エクボクローク)」や、遊休スペースを有効活用した時間料金制ワーキングスペースを展開する「コインスぺース」など、新たなシェアリングエコノミーが続々生まれている。

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中でも最近、渋谷の街で目につき始めているのが、傘シェアリングサービス「アイカサ」だ。日本国内の傘消費量は年間に1億本を優に超え、そのうち大多数をビニール傘が占めているという。日本人一人が少なくとも年間に1本程度の傘を買っている計算になる。確かに突然雨に降られて、慌ててコンビニでビニ傘を買うというパターンは、決して珍しいことではない。また欲しくて買った傘ではないため、愛着度は低く、雨が止むと同時にどこかに置き忘れてしまい、使い捨てになることも少なくない。何とももったいない状況だ。

こうした使い捨てられる傘を、シェアリングエコノミーの発想で解決できないかと考えたのが、渋谷に拠点を構えるベンチャー企業の「Nature Innovation Group(ネイチャーイノベーティブグループ)」(渋谷3丁目)である。2018年12月から、店舗やオフィスビルなどのちょっとしたスペースに「傘のシェアリングスポット」を設置し、傘のシェアリングサービス「アイカサ」を始動。ローンチからまだ間もないが、賛同する企業も徐々に増え、渋谷駅周辺の売店や映画館、カラオケボックスなど、現在渋谷区を中心に約90カ所でサービスを展開しているという。

1日の傘の利用料金は70円、1カ月の間なら何度も使っても上限は420円。ちなみにコンビニの傘はセブンイレブンが547円、ファミリーマートが554円…とだいたい550円前後が相場。月額420円の使用料なら、仮に梅雨時に1カ月間借りていたとしても、買うよりも得である。

▲左)LINE@で「アイカサ」を友達登録すると届くページ 右)渋谷駅周辺に数多くのスポットが点在。アイコンをクリックすると、そのスポットの所在地のほか、現在ストックされている傘の本数なども表示

利用方法は、まずLINE@アカウントから「アイカサ」を検索し、友達に追加。LINEに届いた説明ページから、自分が今いる場所に最も近い「アイカサスポット」を探す。その場所に設置している傘の柄に付いているQコードをスマホでスキャンすると、傘1本1本に付与されているパスワードが表示される。その数字をダイヤルロックに合わせると、ロックが解除されて傘の利用ができるという仕組みだ。支払いは初期登録時にクレジットカードを登録するのみ。新たに余計なアプリをダウンロードすることなく、すべてのやり取りがLINE内で完結するのがシンプルで分かりやすい。

ただ「傘」のシェアリングサービスは、「アイカサ」が初めてではない。過去には青山学院大学の学生らを中心に「シブカサ(SHIBUKASA)」というエコプロジェクトが2007年に始動し、その後、一般社団法人化して活動を行っていた。ピーク時には渋谷駅周辺や青山、表参道、原宿などに提携店舗を39店舗持ち、年間延べ2,000本ほどの傘を流通させていたが、約5年ほどでプロジェクトは立ち消えてしまった。時代が早すぎ、現在のような「シェアリングエコノミー」という考えそのものがまだ一般的に定着していなかったこと。さらに性善説を前提とした傘の「無料」レンタルであったため、傘の返却率が低く、サスティナブルなサービス継続が難しくなったことが挙げられる。「ご自由にお使いください。後日、提携店に傘をお戻しください」という発想はとても理想的ではあるが、「晴れている日に持って行くのが面倒臭い」など人間の本性は案外利己的なものと言える。

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そういった意味で有料サービスである「アイカサ」は、「シブカサ」の反省を踏まえたサービスといえる。低額とはいえ、クレジットカード登録でお金が自動で引き落とされるため、「なるべく早く傘を返却したい」というユーザー意識が必然的に働く。結果、傘の流通が活性化していくという好循環が生まれ、事業の持続性や成長を高めることにつながる。

今春にはメガネスーパー100店舗でのサービス導入も予定。さらに2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催までに、全国での傘流通数30,000本の実現を目指すほか、インバウンド向けの多国語対応も進めていく計画だという。

新たなアイデアが功を奏するか、「傘シェアリング」が渋谷のまちで定着するか否か、今後の動向を注目していきたい。

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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