渋谷文化プロジェクト

渋谷をもっと楽しく!働く人、学ぶ人、遊ぶ人のための情報サイト

BOOK × SHIBUYA 渋谷の書店がオススメする3冊

渋谷ではたらく人びとに向け、渋谷にショップを構える書店員が月替わりで「今、読んでおくべき本」を紹介します。

今回のテーマ

東京の”いま”を知るTOKYOカルチャー

渋谷モディにオープンした「HMV&BOOKS TOKYO」は書籍だけでなく、音楽や映像、雑貨、イベントなども複合的に展開する。5F〜7Fの各フロアには「世界の食と旅」(5F)、「生きるヒント」(6F)、「Tokyoカルチャー」(7F)というテーマが設けられ、それに沿って、たとえば「男と女」「からだ」「食」「ギフト」など、ユニークなコーナーづくりが行われている。棚には、書籍やCD、DVD、雑貨などをコンセプチュアルに配置し、新しい書店の形を提案する、ワクワク感いっぱいのショップだ。

今回の「BOOK×SHIBUYA」のブックセレクターは、すべてのフロアの書籍のバイイングを総括的に担当している副店長・武藤理恵さん。渋谷文化の読者のために、6F「科学」、7F「ジャパニーズミュージック」「アート・デザイン」の3コーナーから1冊ずつ、おすすめの本をピックアップしてもらい、それぞれの書籍について紹介してもらった。

前述したように「HMV&BOOKS TOKYO」の魅力は、商品がクロスマーチャンダイジングされているという点。今回、3冊の書籍を選んでもらったが、実際に店舗に足を運んでみて、この3冊の周りにはどんなCDやDVD、雑貨などが配置されているのか、ぜひ確認してみてほしい。きっと、驚きのラインナップが広がっているはずだ。

今月のブックセレクター

武藤理恵さん(HMV&BOOKS TOKYO副店長 兼 6Fフロアマネージャー 兼 書籍チーフバイヤー)

売り場面積は約550坪。書籍を中心に約40万点の商品を取り扱う。「LIVE BOOK STORE」「LIVE MUSIC STORE」「LIVE MOVIE STORE」をコンセプトに、日々動きのあるような、新しい出会いや発見があるショップを目指す。店内にある3か所のイベントスペースでは、毎日ライブやトークショーなどのイベントを開催する予定。


店 名:
HMV&BOOKS TOKYO
住 所:
渋谷区神南1-21-3
渋谷モディ 5F・6F・7F
電 話:
03-5784-3270
営 業:
平日11:00〜23:00
定 休:
不定休

ブックセレクターからのオススメ

「ジャパニーズミュージック」コーナーより
「東京大学『80年代地下文化論』講義-決定版-」

画像
タイトル
「東京大学『80年代地下文化論』講義 決定版」
著 者
宮沢章夫
出版社
河出書房新社
発売日
2015/11/5
価 格
2700円(税込)
サイズ
21.2cm
ページ
308P

劇作家、演出家、作家である宮沢章夫さんが、2005年の秋に東京大学で非常勤講師をした際の講義を収めた1冊。2006年に白夜書房から刊行された書籍「東京大学『80年代地下文化論』講義」に、一部表記や事実関係の訂正を施し、さらに、2015年2月のゲンロンカフェで行われた講演「1986年の3つの出来事、そして90年代へ」を補講として追加収録。

<武藤さんのオススメポイント>
「ジャパニーズミュージック」コーナーで「渋谷系の遺伝子たち」と銘打って大フィーチャーしている本書ですが、音楽の本ではありません。ピテカントロプス・エレクトス、西武セゾン文化、YMO、オタク、岡崎京子…など、いわゆる、80年代の東京の文化、なかでもサブカルチャーについて論じられた一冊です。のちに「渋谷系」と呼ばれた音楽シーンの起源だったり、その中で、どのような人たちがおり、繋がっていたのか、当時注目された「かっこいい」という価値観だったり、90年代へとつながっていく道筋もよく分かる日本文化論です。大学の講義ではあるのですが、ポップカルチャーに少しでも興味のある方なら、楽しんで読めると思います。

「科学」コーナーより
「MAKERS―21世紀の産業革命が始まる」

画像
タイトル
「MAKERS―21世紀の産業革命が始まる」
著 者
クリス・アンダーソン(著),関美和(翻訳)
出版社
NHK出版
発売日
2012/10/23
価 格
2052円(税込)
サイズ
19cm
ページ
320P


テクノロジーニュースなどを取り上げる米ワイアード誌編集長のクリス・アンダーソンさんのベストセラー。「ロングテール」という言葉を同誌で最初に紹介し、著書「ロングテール―『売れない商品』を宝の山に変える新戦略」(早川書房)がベストセラーに。また、ビット世界における無料経済モデルを取り上げた「フリー」(NHK出版)は、日本のアマゾンの年間ベストセラートップ10入りを果たす。それらに続く本書では、デジタルを動力にして起こっている、リアルな「ものづくりムーブメント」について考察する。

<武藤さんのオススメポイント>
「科学」コーナー内の「ものづくり」というセクション名の表示の下に、英語で「Makers」というサブタイトルがつけられています。これは、 本書「MAKERS―21世紀の産業革命が始まる」から名づけたのですが、現代の「ものづくり」の世界を象徴する一冊と言えるでしょう。著者によると、数年前から、世界では、ものづくりにおいて革命とも言えるパラダイムシフトが起こっており、これまでは企業でしかできなかったものづくりビジネスを、一個人が、簡単に、ITを使って行うことができるようになりました。本書では、3Dプリンタを一例に挙げ、個人がITを駆使して、製造から世界中に向けて販売するまでの一連の流れが描かれています。いま、ものづくりは、ITによって大きくそのあり方を変えようとしています。そして私たちは、その産業革命の真っ只中にいることを実感させられます。

「アート・デザイン」コーナーより
「Vivian Maier: Street Photographer」

タイトル
「Vivian Maier: Street Photographer」
著 者
Vivian Maier(著), Geoff Dyer(寄稿), John Maloof(編集)
出版社
powerHouse Books
発売日
2011/11/16
価 格
4957円(税込)
サイズ
25.8cm
ページ
136P


アメリカの無名の写真家・ヴィヴィアン・マイヤー(1926-2009)が生前に撮りためた写真群を収録。1940年代〜1950年代を中心に、ニューヨーク、シカゴ、東南アジアや中東、南アメリカを舞台に撮影された、オールモノクロのストリートフォト集。まるで魂が吹き込まれたかのように味わい深く、ユーモアに満ちた作品の数々が世界で広く称賛される。

<武藤さんのオススメポイント>
表紙のヴィヴィアン・マイヤーは生きている間、誰も知らなかった無名のフォトグラファーです。恐らく、本人も、自身のことをカメラマンとは思っていなかったと思います。彼女の本業は、ナニー(住み込みの子守り)。その傍ら、趣味で、ずっと写真を撮り続けていました。亡くなったのちに15万点以上ものネガが発掘されて、その才能が日の目を浴び、一躍有名になりました。アメリカでは去年、彼女を描いたドキュメンタリー映画「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」が公開され、カメラマンとしての才能はもちろんのこと、「なぜ、こんなにも優れた写真を撮ることができたのか?」「なぜ、誰にも作品を見せなかったのか?」といったミステリアスな面も加わり、話題となりました。日本でも昨秋、映画が公開になり、いま最も注目すべき写真家の一人と言って良いでしょう。


取材・文/ 田賀井リエ(代官山ひまわり)

バックナンバー

オススメ記事