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BOOK × SHIBUYA 渋谷の書店がオススメする3冊

渋谷ではたらく人びとに向け、渋谷にショップを構える書店員が月替わりで「今、読んでおくべき本」を紹介します。

今回のテーマ

没後30年、テラヤマ・ワールドは色あせず

5月4日、寺山修司の没後30周年目の命日を迎える。30年前といえば、随分と昔のように感じるが、常に人が追い付けないほど先を進んでいたテラヤマ・ワールドを考えれば、ようやく時代が追いついてきたところかもしれない。

没後30年を迎えた今春は、天井桟敷の最終公演として上演された戯曲「レミング」(4月21日〜5月16日)が八嶋智人さんや片桐仁さんら個性派俳優陣を迎えてパルコ劇場で公演されるほか、「寺山修司と天井棧敷◎全ポスター展」(〜5月19日、ポスターハリスギャラリー)など、渋谷を中心に様々な企画や催しが目白押しだ。さらに目にした人も多いと思うが、現在、山手線・渋谷駅構内に掲出されているタワレコの広告シリーズ「NO MUSIC, NO LIFE?」(左写真)では、チバユウスケさんや故・忌野清志郎さんらミュージシャンと並び、ボクシングリングの中央に立つテラヤマの姿と、彼が作詞した「あしたのジョー」の歌詞「あしたは きっとなにかある あしたは どっちだ」が引用され、見る者に強烈なインパクトを与える。こうして時代が変わっても色あせず、今もなお、若者たちから大人まで熱い支持を受けるテラヤマの魅力は一体どこにあるのだろうか。

今回の「シブヤ×ブックス」では、5月初旬に「寺山修司フェア」開催を企画するMARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店の書店員で、大の寺山ファンを自負する伊藤傑さんに、今までにテラヤマに触れたことのない人でも、その魅力が十分に伝わる入門編にピッタリな3冊をご紹介してもらった。

「レミング 〜世界の涯までつれてって〜」(パルコ劇場/公演:2013年4月21日〜5月16日)
「寺山修司と天井棧敷◎全ポスター展」(ポスターハリスギャラリー/開催:2013年4月10日〜5月19日)
「寺山修司没後30周年ブックフェア」(MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店/開催:2013年5月3日〜5月31日)
>寺山修司展「ノック」(ワタリウム美術館/開催:2013年7月6日〜10月27日)

今月のブックセレクター

文庫・新書担当 伊藤傑さん(入社12年目)

店 名:
MARUZEN&ジュンク堂 渋谷店
住 所:
渋谷区道玄坂2-24-1東急百貨店本店7階
電 話:
03-5456-2111
営 業:
10時〜21時
取扱・サービス:
和書/洋書/コミック/カフェ/文具

渋谷最大級1100坪のワンフロア。専門書の品揃えに定評があり、蔵書は約130万冊を数える。丸善とジュンク堂とのコラボショップで文具が充実し、NHK関連グッズが揃う「NHKスクェア」も併設する。

ブックセレクターからのオススメ

テラヤマの活動全体を俯瞰できる1冊
−「寺山修司」

画像
寺山修司
タイトル
「寺山修司」(コロナブックス)
編 集
太陽編集部
出版社
平凡社
発売日
1997/07
価 格
1600円(税込)
サイズ
A5ハードカバー
ページ
116P

47歳の若さで逝った寺山修司。歌人、詩人、作家、映画監督、劇団主宰、写真、競馬評論など、様々な肩書きと幅広い才能を持ったその魅力をバイオグラフィーと写真でまとめたビジュアルブック。

<伊藤さんのオススメポイント>
15歳くらいの思春期のころ、大槻ケンジなどサブカルの人びとが支持する寺山修司とは一体どんな人なのか、という興味から読み始めました。一番影響を受けたのは「書を捨てよ、町へ出よう」「家出のすすめ」など。当時、それを読んで価値感が変わるような、心が揺さぶられるような感覚を得て、実際に家出をしてしまったことも…(笑)。それから20年余りが過ぎましたが、今回フェアを開催するに当たり、結構忘れていることも多かったため、このビジュアルブックを買って復習しました。テラヤマの全体像やエッセンスが分かるため入門者にオススメ。また私のように昔、テラヤマが好きだった人は懐かしさがこみ上げてくる一冊だと思います。

名言集は小説以上に衝撃が大きい
−「寺山修司名言集 身捨つるほどの祖国はありや」

画像
寺山修司名言集
タイトル
「寺山修司名言集 身捨つるほどの祖国はありや」
著者
寺山修司
出版社
パルコ出版
発売日
2003/03
価 格
1575円(税込)
サイズ
単行本
ページ
366P

寺山修司の遺したあらゆる著作物の中から、「名言」とされる言葉の数々を厳選してまとめた一冊。ロッテ「小梅」の小梅ちゃんのキャラクターで知られるイラストレーター、林静一さんが描いた表紙カバーの少女の絵も秀逸。ちなみに「書を捨てよ、町へ出よう」「家出のすすめ」「さかさま恋愛講座 青女論」など、かつての角川文庫のテラヤマ作品のほとんどの表紙カバーを林静一さんが手がけていた。

<伊藤さんのオススメポイント>
「ポケットに名言を」など、テラヤマの名言集は結構あります。エッセイだと時代認識が古かったり、現代と家族の捉え方にズレを感じることも少なくありませんが、「名言集」はそうした前後の余計な背景がない分、現在の自分に投影しやすいように感じます。むしろ、エッセイを読むよりも、心に響く衝撃が大きいかもしれません。テラヤマは言葉の使い手であり、アジテーションの仕方もとてもうまい。まずは「名言集」を目次代わりにして、気に入った言葉があったら、そのエッセイや歌集、戯曲などを探してみてはいかがでしょうか。

テラヤマワールドの原点に出合える
−「寺山修司青春歌集」

寺山修司青春歌集
タイトル
「寺山修司青春歌集」改版
著者
寺山修司
出版社
角川書店
発売日
2005/01
価 格
460円(税込)
サイズ
文庫版
ページ
200P

18歳で「短歌研究」新人賞を受賞し、歌人デビューしたテラヤマが情感に溢れたみずみずしい言葉で歌った作品群。マルチな才能を持つテラヤマの若き日の原点に触れることが出来る一冊で、戦後世代の新しい青春像を切り拓いた傑作歌集といえる。

<伊藤さんのオススメポイント>
いざフェアやろうとしても、寺山修司の本は絶版になっているものも多く、意外に手に入りにくい。「じゃー、どこにテラヤマの本があるのか?」と考えたときに、一番に頭に浮かぶのが角川文庫です。角川さんは、名言集、歌集、俳句集、エッセイ、戯曲あり…、主要なタイトルがすべて揃っていて、本当に素晴らしい。文庫編集者の心意気を強く感じます。この歌集は、今から7年前に表紙カバーを人気モデルの華恵(はなえ)さんの写真に一新するなど、若者に向けた新装版として刊行。もともと短歌や俳句が認められて世に出てきたテラヤマなので、この歌集を通じて彼が「言葉のひと」であることを感じてほしい。

仮にテラヤマを10代で読んだ人であっても、40、50代になって改めて読むとき、感じるものが全く違うと思う。思春期のころは、自分にとってテラヤマは大人で偉い人で信頼できるものだったけど、今は彼に全幅の信頼を寄せているかといえば、そうではなくて非常に虚実入り混じる人だったのではないか、と感じています。それは自分がテラヤマの亡くなった年齢に近づきつつあり、友だちのような感覚で、彼と同じように物事が見られるようになってきたから。思春期には思春期の、大人には大人のテラヤマの読み方があるように感じます。

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