KEY PERSON

渋谷は、お金を払って観る文化が根付いている街。オフ・ブロードウェイみたいに、なれたらええなぁ。2006年3月25日、渋谷に「ヨシモト∞(無限大)ホール」がオープンした。年中無休でヨシモトのライブが繰り広げられるとあり、大人気のスポットになりそうだ。吉本は何故、渋谷の地を選んだのか。開設準備を進めてきた吉本興業の竹中功さんに、その理由を聞いた。

(※)こちらは、2006年4月時点のインタビューで、営業時間等、施設情報に変更が加わっています。詳細は「ヨシモト∞ホール」までお問い合わせください。
渋谷には「吸引力」がある。集まった人々を巻き込んでライブを作っていきたい。--「ヨシモト∞ホール」は、どんなライブが展開されるのですか?
年中無休で、16時から21時まで毎日5時間ぶっ通しのライブをやります。新宿の「ルミネtheよしもと」と違うのは、観覧が「無料」のところ。「ルミネtheよしもと」は、モダンな寄席小屋という位置付けで、お金をいただいて笑いを提供するのが目的です。一方、「ヨシモト∞ホール」は、そもそも、スカパーの「ヨシモト ファンダンゴTV」とか、インターネットや携帯電話で配信するための映像を収録するためのスタジオなんですね。5時間のライブを編集し、どんどんコンテンツを作っていくんです。だから、言ってみれば、お客さんのリアクションも演出の一つなんです。無料にした分、こちらがお客さんを選べますからね。若い女性や夫婦、サラリーマンなどいろんな人を呼び込んで、街を巻き込んで番組を作ろうというのが、渋谷にホールを持ってきた最大の狙いですね。

--どのような理由で渋谷を選んだのでしょうか。 もともとは有明のスタジオを使っていたのですが、そこが3月で閉じることになったので、都心で300人位が入れる会場を探していたんです。渋谷を選んだのは、以前に経営していた公園通りの劇場の感触が良かったから。劇場にしては天井が低く、柱が多かったという事情もあって閉めたのですが、その時の経験のおかげで「オレも出たい」とか「漫才ってどうやればいいの」とか、プロになりたいというヤツがどんどん集まって、東京にNSC(吉本総合芸能学院)を作るきっかけになったんですね。その中からガレッジセールやインパルスが出てきた。そういう街の持つ「吸引力」の強さを感じていたこともあり「渋谷がいいなぁ」と。

--観覧客には、どのような世代を見込んでいますか?
そうですね、最初にスタジオに集まるのは、若者が中心になると思います。が、徐々に年齢層を広げていくつもりですよ、外国人も含めて。最近、新宿の「ルミネtheよしもと」で昼の時間帯にライブを始め、ベテラン勢を出演させるようにしたのも、年齢層の高い客を呼び込むのが狙いなんです。お笑いを若い人のモノにしてしまったのは吉本の罪だと思いますからね。どんどん広げていきたいですよ。大阪の花月劇場は、平日は12時、土日は10時から開いていて、毎日二千人近くのおじさんやおばさんが「ガハハ」と笑ってます。そんな街、世界のどこにもないですよ。ヨシモト∞ホールも24時間使えますから、ゆくゆくは各世代に合わせたプログラムを提供するつもりです。それから新たに多くのスタッフが必要ですから、人材募集もしたいですね。ニート対策も視野に入れながら。吉本で、最終的に芸人を目指してもいいし、プロデューサーでも、演出家でもライターでもいい。若い世代に夢や希望、そして現実を見てもらえる場にしたいと思ってるんです。

ヨシモト∞ホール


渋谷はライブエンターテインメントが似合う街。オフ・ブロードウェイみたいに、なれたらええなぁ。--渋谷とお笑いの相性は、どうでしょうか。
ばっちりやないですか。渋谷には映画館や劇場があって、ちょっと隠れたところにはストリップがあったりするでしょ。お金を払って何かを観るという文化が根付いているということで渋谷は素晴らしいですよ。まぁ、うちは無料ですけど(笑)。そういうライブエンターテインメントをもっと集めて、NYのオフ・ブロードウェイ()みたいになれたらええなぁ、と思います。渋谷には、「モダン」なことの最先端にいるという自信を持って欲しいと思いますね。ファッションにしても、デザインにしても、各分野のトップが集まり個性がぶつかり合って、日々、新しいものが生まれている。お笑いも、時代と共に歩むもんですから、新しいモノを作らなくてはなりません。ダウンタウンだって20年以上やっているけど、常に新しいものを生み出していると、ボクは思いますしね。お客さんも、店の人も、企業も、行政も、有象無象を受け容れる懐(ふところ)を持って欲しいですね。渋谷には。

--今の渋谷に、その懐はあると思いますか? あると思いますよ。

--竹中さんご自身と渋谷との付き合いは? 20数年前には赤坂に事務所があり、そこに時々出張で来ていました。その頃はタワーレコードが渋谷と横浜にしかなく、よく仕事の合間に来ていました。私が転勤で東京での仕事に本腰を入れるようになってからは、表参道に住んでいます。どこに住もうかと迷ったのですが、地下鉄が便利だったので。最初は地元の気分でジャージと草履で歩いたら、かなり浮いてしまい、原宿辺りで引き返したこともありましたね(笑)。まだ回遊するほど渋谷の街には馴染めていませんが、レコード屋を巡るのが楽しいですね。あと、気に入っている沖縄料理屋やバーなんかもあります。駅前だけを見ると人が大勢で気が滅入りますが、上手に探したらのんびりできる空間が結構ありますね。

--最後に、今後の渋谷に望むことをお聞かせください。
もっと劇場が増えるといいですね。仕事の後に演劇や演芸を楽しんで、その後に感想を話しながら一杯やれる大人向けの店があって、おまけに物販の店も終電の時間まで営業していると嬉しい。映画館もレイトショーを充実させてほしいですね。それから、お金を持っていて時間に余裕のある大人が楽しめる街を目指してほしい。「ちょいワル」って言うんですか(笑)、そういう世代が「VAN」だけを扱うショップを作ったり、それから今もハーレーのお店がありますけど、おじさんたちがバリバリとバイクを走らせたり…。大人の世代が用事もないのに来られる街になってもらいたいですね。

あと、ボクは、渋谷には、世界の「SHIBUYA」に成長して欲しいと思うんです。ブロードウェーに負けてられないですよ。映画の撮影で香港に行ったら、現地の若者は渋谷や原宿で服を買っていると言うんですね。そういう「渋谷ファン」を世界中に作って欲しい。それにはインターネットも活用できるだろうし、何よりも「ここでしか買えない」「ここでしか観られない」というモノを増やしていくことが大事じゃないですか。

「オフ・ブロードウェイ」とは
マンハッタンにある比較的小さい劇場で上演される演劇のこと。目安としては500席以下の劇場を呼ぶ。ブロードウェイではミュージカルが多いのに対して、オフ・ブロードウェイではストレート・プレイ、パフォーマンス、1人芝居、ダンス、ミュージカルなど様々なジャンルの作品が上演されている。オフ・ブロードウェイでロングラン上演されているものには「STOMP」や「Blue Man Show」がある。(「Wikipedia」より)

■プロフィール
竹中功さん
1959年大阪市生まれ。1981年に吉本興業に入社。以後、広報担当を務め、今年2月に300号を迎えた雑誌『マンスリーよしもと』の編集長も兼務。NSC(吉本総合芸能学院)のプロデュースにも携わり、一期生として入校したダウンタウンなどの面接を務める。現在は、メディアリレーションズセンター、および広報センターのセンター長を兼任。『ナビィの恋』『無問題』をはじめ、多くの映画の製作も担当。

ヨシモト∞ホール ヨシモト∞ホール東京都渋谷区宇田川町31-2
渋谷ビーム内 ヨシモト∞ホール
JRほか渋谷駅から徒歩7分
吉本興業が、宇田川町のアミューズメント施設「BEAM(ビーム)」の地下1階に開設した無料ライブホール。客席数は282席。1年365日、16時から21時まで、スタジオを兼ねた同ホールから、スカイパーフェクTVの吉本専用チャンネル「ヨシモトファンダンゴTV」の公開生番組「ヨシモト無限大」を放送する。番組は、CS放送のほか、ウェブ、携帯電話でも有料配信。

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