今回は渋谷で公開予定の映画から、震災にまつわる作品をピックアップ
ヒューマントラストシネマ渋谷では3月7日から、東日本大震災での自衛隊の活動を伝えるドキュメンタリー「ポセイドンの涙」が公開される。
これまでもテレビ各局・新聞各社で特集が組まれてきた被災地での自衛隊員の救助活動。震災直後、日本国民の多くが被災地の惨禍に呆然と立ち尽くした一方で、自衛隊は即座に救助活動に着手。その献身的な姿に、心を打たれた人も多かったのではないだろうか。
同作は海上自衛隊の全面協力を得て、彼らが撮影した映像を通して「あの地震での自衛隊の活動」を紹介。合わせて救助にあたった自衛隊員、彼らに救出された被災者の現在の姿にもカメラを向けた。宮城県塩竈市の隣、七ヶ浜での避難生活を通して出会った被災者・内海さん(15歳)と横須賀音楽隊所属村上3曹との2年後の再会、当時は遺体の捜索にあたったという海上自衛隊谷口2等海曹が今打ち明ける胸の内、福島県南相馬市で海に流されていた新川さんを救出したチームの一人・第六護衛隊護衛艦瀧石信幸1等海曹の言葉「被災者に申し訳ない」の意味とは? 被災者という「人間」と自衛隊員という「人間」とのありのままの姿を通して、今なお残る震災の傷跡・そこから生まれた希望の光を感じてみて欲しい。
シアター・イメージフォーラムでは3月7日から、福島とチェルノブイリ後のベラルーシを舞台に、原発事故後の母親たちを追ったドキュメンタリー「小さき声のカノンー選択する人々」がスタートする。
メガホンを取ったのは、原子力産業の矛盾を描いた「六ヶ所村ラプソディー」や、原発のその先へ向かう方法と原発再稼働の問題に着目した「ミツバチの羽音と地球の回転」など「核」をめぐるドキュメンタリーを作り続ける鎌仲ひとみ監督。「子どもたちを被ばくから守ることができることを伝えたい」との思いから生まれたという同作では、福島原発事故による影響に不安な気持ちを抱えたお母さんたちにカメラを向けた。一方で、チェルノブイリ原発事故を経験したベラルーシにも取材。福島とチェルノブイリとの時間差は25年。ベラルーシでは今なお事故の影響が続いているといい、日本のお母さんたちと同様、不安を抱いたお母さんたちが子どもたちを守る道を探し続けていた。原発事故から4年。呆然と思考停止するのではなく、それぞれの思いに従い、意志を持って自身の道を具体的に進む日本のお母さんたちの声を記録する同作。お母さんたちのしなやかさ、強さ、揺らぎや弱さまで含めて、感じ取ってみたい。
渋谷シネパレスでは4月4日から、福島県柳津町をメーンのロケ地に撮影された「お金」にまつわるコメディ映画「ジヌよさらば〜かむろば村へ〜」がスタートする。
漫画家・いがらしみきおの「かむろば村へ」を原作に、松尾スズキがメガホンを取った同作。主人公は、お金を“さわれない、使えない、欲しくない”の三拍子がそろった“お金恐怖症”になってしまった元銀行マンの青年タケ。「1円もお金を使わない!」と決意を固め、田舎の小さな村かむろば村へやって来た。田舎の自給自足ライフを甘く見ているフシもあるこの男が、濃すぎる村人たちに囲まれて1円も使わない生活を敢行。最初はタケの無知と無鉄砲さにあきれていた村人たちも、タケの存在を優しく受け入れてゆく…
メーンの舞台となった柳津町は、福島県の西南部に位置する農山村。町では撮影場所や観光地などをまとめたマップや記念コーナーを用意して、映画の撮影地となった柳津町の観光事業の振興に力を入れている。東日本大震災では人的被害はみられなかったというが、福島原発事故の影響を受けて観光業や規制外農産物などについて今なお風評被害が残るという同町。作品を通して町の魅力を味わい、映画のロケ地めぐりを楽しみながら、復興支援につなげてみては?