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独断と偏見で「2018年の渋谷」を振り返る

遅ればせながら、昨年2018年の「渋谷のニュース」をランキング形式で振り返っていきたいと思う。なお、ランキングの順位は、あくまでも独断と偏見で決めたものであるため、やや偏りや違和を感じる人もきっと多いかもしれませんが、ご容赦ください。

<独断と偏見で選ぶ!2018年、渋谷ニュースランキング>
1位:桜丘町の大規模再開発で老舗が続々閉店へ
2位:渋南エリアに「渋谷ストリーム」&「渋谷川沿いの遊歩道」が誕生
3位:平成を駆け抜けた安室奈美恵さん引退、渋谷がアムロちゃん一色に
4位:代々木公園に「渋谷スクランブルスタジアム」建設構想の発表
5位:創業40年を控えて「SHIBUYA109」の新ロゴ発表
6位:暴徒化する「渋谷ハロウィン」が問題に
7位:シブヤビットバレーが復活&駅前再開発エリアがIT企業集積地に
8位:渋谷駅前に新観光名所「スクランブルビュー」が誕生!
9位:岡本太郎の巨大壁画「明日の神話」設置から10年目
10位:再開発で消えゆく渋谷・桜丘町でアートイベント

1位:渋谷・桜丘町の大規模再開発で老舗が続々閉店へ

渋谷駅周辺では複数の再開発プロジェクトが同時に進行しているが、中でも渋谷・桜丘地区は他の案件と規模が大きく異なる。例えば、2012年に開業した「渋谷ヒカリエ」は「渋谷文化会館」の建て替え、今秋に開業したばかりの「渋谷ストリーム」、また2019年に開業予定の「渋谷スクランブルスクエア」は東横線の線路跡地を利用したもの。その一方で桜丘地区の再開発は、渋谷駅南西部の桜丘町1〜3番地、8番地(4番地も 一部含む)の飲食店やライブハウス、事務所、住宅など約60棟を解体し、約2.6haもの敷地を一体的に整備していこうという規模だ。単なる建物の建て替えというよりも、「小さな町」が一つ消えるような感覚に近い。

▲国道246号沿いの桜丘町の風景(2018年9月撮影)。現在は店舗全てが閉店し、賑やかだったまちは静まりかえっている

10月末から11月初旬にかけて一斉に立ち退きが始まり、立ち飲みの名店「富士屋本店」やジャズ喫茶「メアリージェーン」、クレージーキャッツ・石橋エータローのお店として知られた小料理屋「三漁洞」、釣り具専門店「上州屋」などの老舗が続々閉店。通い詰めた店がなくなり、寂しさを感じている人もきっと多いことだろう。
▲左)富士屋本店 右)メアリージェーン

今年1月から本格的に解体工事が始まり、再開発工事の完了は2023年度を予定する。今まで国道246号線で分断されてきた桜丘エリアは、渋谷駅からフラットな歩行者動線が整備され、まちの利便性は確実に高まることだろう。5年後、新しくなった商業施設に再び老舗が戻って来てくれることを期待したい。

桜丘町の再開発に関連して、同じく10位にも「再開発で消えゆく渋谷・桜丘町でアートイベント」がランクイン。「渋谷エピキュラス」「ヤマハエレクトーンシティ渋谷」として40年以上にわたり、渋谷・桜丘町に根付いてきた「ヤマハビル」。まちを見下ろす高台に立地することから「崖の上のヤマハ」と呼ばれ愛されてきたが、再開発に伴い、2017年12月に同所での営業を終了。その後、空き家となっていたが、昨年の2018年11月17日(土)〜12月2日(日)までの期間、本格的な解体作業を控えて最後のアートフェスティバル「arigato sakuragaoka by art photo Tokyo」が開かれた。
▲左上)レスリー・キーさんの写真展示の風景 左下)柿本ケンサクさんの写真展示の風景 右)アートイベントが開催された解体予定の旧ヤマハビル

レスリー・キーさん、HIROMIXさん、若木信吾さん、篠山紀信さん、荒木経惟さん、蜷川実花さん、杉本博司さんなど、日本を代表する巨匠から若手まで総勢50人以上のアーティストたちが集結し、「桜丘町のまちじまい」をアートイベントで見送った。桜丘町やヤマハの記憶が各々の中にしっかりと刻み込まれたことだろう。

<関連記事>
・【レポート】再開発で消えゆく渋谷・桜丘町でアートイベント(2018/11/20)
・渋谷駅桜丘口再開発プロジェクト(2017/4)

第2位:渋谷ストリーム&渋谷川沿いの遊歩道が誕生

今秋、東横線線路跡地に大規模複合施設「渋谷ストリーム」が開業し、同時に渋谷川沿いに「新しい遊歩道」が誕生した。
▲左が2012年に撮影した渋谷川沿いの風景。写真中央の奥に高架橋上を走る東横線の姿が見える。右は2018年9月に撮影した渋谷ストリームと渋谷川の風景。ビフォーアフターの大変身ぶりに驚くばかり

従来までの渋谷川はお世辞にもキレイとは言えず、川沿いには東横線の高架橋が高く聳え立ち、日中でも薄暗い印象が強かった。「癒しの水景空間」とは、とても呼べるものではなかった。ところが今回の渋谷ストリームの建設と一体的に川に清流復活水を流し、遊歩道や広場を新たに整備するなど、官民連携で渋谷駅の南東エリアに「新たな人の流れ」を作ったことは非常に価値のあるものといえるだろう。渋谷のまちは、どうしてもハチ公広場、スクランブル交差点、道玄坂、公園通りと駅北側に人の流れが集中しやすく、混雑も生みやすい。人の流れを分散化する意味でも駅東側、南側の活用が課題とされてきた。かつて渋谷川を暗渠化して「キャットストリート」が生まれ、渋谷と原宿間がぐっと近くなったように、今回の遊歩道の誕生をきっかけに渋谷と恵比寿、渋谷と代官山方面へのアクセス向上が一気に高まることだろう。

第3位:安室奈美恵さん引退で渋谷がアムロちゃん一色に
第5位:SHIBUYA109の新ロゴ発表

1992年(平成4年)にデビューし、2018年(平成30年)に引退したアムロちゃんは、まさに平成を駆け抜けた歌姫と言えるだろう。
1996年には、ロングヘアー、ミニスカ、細まゆげ、厚底ブーツなど、アムロちゃんのファッションを真似する「アムラー」が渋谷の若者たちを中心に増大し、一躍社会現象を巻き起こす。90年代の渋谷ギャルブームの火付け役だった。

▲渋谷駅に掲出されたアムロちゃんの広告を撮影する人たち

2018年9月15日の引退日まで、渋谷のまちはアムロちゃん一色に染まった。渋谷ヒカリエでは展覧会「namie amuro Final Space」、SHIBUYA109ではキャンペーン「SHIBUYA109 Loves namie amuro」が開かれ、渋谷の街頭広告はほぼアムロちゃんが占めた。
▲左)109に掲出されたアムロちゃん広告 右)店頭に設置されたアムロちゃんの手形

15日の引退日には、かつてのアムラー世代であるアラフォーを中心にSHIBUYA109店頭に設置された「アムロちゃんの手形モニュメント」に大行列が出来ていたのがとても印象的だった。一時代の終焉を感じさせる大きなニュースとなった。

90年代のギャルといえば、その聖地は「SHIBUYA109」だ。今年で開業から40周年を迎える商業施設であるが、現在ではギャルに限らず、幅広いティーンズ・ファッションを取り扱う。40年という節目、さらにかつてのギャルファッションからのイメージチェンジも兼ねて、昨年夏にSHIBUYA109の新ロゴが発表された。渋谷のシンボルである「シリンダー型の建物」に掲げるロゴの変更は、渋谷のまちの風景さえも一変させてしまう力を持つ。新ロゴの差し替えは、新元号の切り替えと共に今年の春ごろの予定だという。

<関連記事>
・SHIBUYA109エンタテイメント社長・木村知郎さんインタビュー(2018/8/1)

4位:代々木公園に「渋谷スクランブルスタジアム」建設構想の発表

産官学民連携で昨年4月に設立された「渋谷未来デザイン」を中心とし、代々木公園内にサッカーなどの多目的スタジアム「渋谷スクランブルスタジアム」の建設を目指す構想が明らかとされた。
約3〜4万人収容規模を想定する同スタジアムは、Jリーグのホームスタジアムのほか、アーティストらのライブ、災害時の避難拠点など、多目的な利用を目指す。約10年くらいの間に同構想を実現するため、渋谷未来デザインでは都に積極的に働き掛けていくそうだ。「ワシントンハイツ」→「1964東京五輪の選手村」→「代々木公園」と、その時代時代で大きな変化を遂げてきた同スペースであるが、今後どうなっていくのか注目が注がれる。できれば、代々木公園が育む自然を壊さず、共生する形で、渋谷ならではの「都市型スタジアム」の実現してほしいものだ。

第6位:暴徒化する「渋谷ハロウィン」が問題に

年々人出が増す渋谷ハロウィン。最近では外国人観光客の姿も目立ち、観光名物の一つとなりつつあるが、その一方で単に仮装を楽しむのみならず、ゴミ問題や暴徒化する一部若者たちに痛烈な批判が寄せられた。
▲SHIBUYA109から渋谷駅方面を撮影(2018年10月31日)。交通規制された道路上は仮装した若者たちで溢れた

夏祭りやカウントダウンイベントと異なり、「主催者なきイベントに問題があるのではないか」という声も多く、高い集客力を持つコンテンツを潰すのか活かすのか、今秋の渋谷区の対応に注目が集まる。

「渋谷の観光」で見逃せないのが、第8位「渋谷の新観光名所 スクランブルビューが誕生! 」だ。外国人観光客が渋谷で見たい観光スポットといえば、「忠犬ハチ公像」と「渋谷スクランブル交差点」の2つである。信号が変わると同時に、360度様々な方向から一斉に動き出す歩行者の姿は、外国人でなくとも驚く光景の一つだろう。昨年4月にリニューアルオープンした商業施設「MAGNET by SHIBUYA109(マグネットバイシブヤ109)」の屋上スペースには、渋谷スクランブル交差点を上から見下ろせる展望台「CROSSING VIEW(クロッシング ビュー)」が新規オープンした。
▲渋谷スクランブル交差点と一緒に記念撮影が出来る注目スポット

交差点全体を俯瞰できる迫力のある絶景ロケーションを楽しめるほか、頭上設置されたカメラからスクランブル交差点と一緒に記念撮影できる仕掛けも秀逸だ。渋谷遺産である「渋谷スクランブル交差点」を観光コンテンツ化した成功事例の一つと言えるだろう。

<関連記事>
・渋谷に新商業施設「MAGNET by SHIBUYA109」オープン(2018/5/11)

第7位:シブヤビットバレーが復活&駅前再開発エリアがIT企業集積地に

渋谷駅周辺の再開発が進み、昨年誕生した「渋谷ストリーム」に続き、今秋には「渋谷スクランブルスクエア」「渋谷フクラス(旧東急プラザ)」が開業する予定だ。新しい施設の中下層部は「商業エリア」、上層部は「オフィスエリア」が生まれ、渋谷のオフィス不足は一気に解消される。2001年にグーグルが初の海外拠点に選んだのは渋谷だったが、社員の増加に伴い、床面積の広い六本木ヒルズへ移転。今年度中に渋谷ストリームにグーグル日本法人が入居し、9年ぶりに渋谷にカムバックする。さらに今秋には渋谷スクランブルスクエアに「ミクシィ」「サイバーエージェント」、渋谷フクラスに「GMOインターネット」がオフィスを構えるなど、ネット黎明期に渋谷で創業したIT企業が一気に駅周辺に集積することになる。
▲左からミクシィ・村瀬龍馬さん、ディー・エヌ・エー・南場智子さん、長谷部健渋谷区長、GMOインターネット・熊谷正寿社さん、サイバーエージェント・藤田晋さん

昨年にはサイバーエージェント、DeNA、GMOインターネット、ミクシィが「シブヤビットバレーの復活」を宣言し、大手IT企業間の連携が一層高まっており、大丸有とは異なる渋谷ならではのクリエイティブ・コンテンツ産業がさらなる成長を遂げそうだ。

<関連記事>
・シブヤ・ビットバレー復活 IT4社が手を組み「エンジニアが働きやすい渋谷」(2018/9/18)

第9位:岡本太郎の巨大壁画「明日の神話」設置から10年目

岡本太郎の巨大壁画「明日の神話」は、広島・広島市、大阪・吹田市と競合の末、2008年に渋谷区を恒久設置先にすることが決定。渋谷マークシティ連絡通路内で公開されて、昨年で丸10年目を迎えた。
水爆実験の黒い雨を浴びたマグロ漁船「第五福竜丸」を題材としたおどおどろしい作品に、設置当時は違和を感じる人もきっと多かったと思うが、この10年間で「まちの顔」としてすっかり定着した。10年の間には、福島第一原発の事故も発生し、私たち人類は岡本太郎がこの絵の中で描く「過去の過ち」をまた一つ繰り返してしまった。この失敗を乗り越えながら、私たちは次の世代に「明るい未来」というバトンを受け継げるのだろうか。

<関連記事>
・【レポート】10年目、岡本太郎「明日の神話」すす払いの深夜舞台裏(2018/11/5)

2018年のランキングを振り返ってきました。桜丘町の老舗の閉店、アムロちゃんの引退、SHIBUYA109ロゴの刷新など、平成と共に一時代の終焉を感じさせるランキングとなりました。とはいえ、昭和、平成のノスタルジーに浸っている場合ではありません。2019年の渋谷は、年始早々に渋谷区新庁舎、春先に渋谷公会堂、秋に渋谷パルコ、渋谷スクランブルスクエア、渋谷フクラスが続々オープンするなど、東京五輪を控えて「空前の開業ラッシュ」が到来する。渋谷がどう変わっていくのか、今年のまちの動きから一瞬たりとも目が離せない。

<過去の関連記事>
・「独断と偏見で「2017年の渋谷」を振り返る」(2018年1月9日)
・「独断と偏見で「2016年の渋谷」を振り返る」(2017年1月11日)
・「独断と偏見で「2015年の渋谷」を振り返る」(2016年1月3日)
・「独断と偏見で「2014年の渋谷」を振り返る」(2015年1月3日)
・「独断と偏見で「2011年の渋谷」を振り返る」(2011年12月31日)
・「独断と偏見で「2010年の渋谷」を振り返る」(2011年1月7日)
・「ゆく渋谷ゼロ年代、くる渋谷10年代」(2009年12月29日)

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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