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CULTURE × SHIBUYA 編集室がオススメする3作品

「映画」「アート」「イベント」「ライブ」「ステージ」など、渋谷で公開、開催を予定するカルチャー情報の中から、編集部オススメをピックアップ。

今回のテーマ

映画に見る国家と個人の関係

第二次世界大戦の終結から70年を迎える2015年の日本。世界ではイラク・シリアを拠点とした「イスラム国」の国家樹立宣言や、中国と周辺諸国との国境領土問題、ウクライナ東部での政府軍と新ロシア派との戦闘など、戦争へと発展する可能性をはらんだ緊迫した政治情勢が各所で見られている。先日から大きな注目を集めてきた日本人拘束事件も含め、日本も現在そんな不安定な国際情勢と無関係とはいえない。 今回は多くの尊い命が犠牲になった第二次世界大戦を思い返し、個人と国家との関係について考える映画群をピックアップ。「第4回死刑映画週間」ではそもそも国家を運営する側も個人の集まりにすぎないということを伝え、クロード・ランズマン監督3作品の特集上映会では様々な視点からホロコーストの歴史にフォーカス、ドキュメンタリー「SAYAMA みえない手錠をはずすまで」では、殺人罪の冤罪を訴え続ける男の生きざまを追う。 平和な環境ではなかなか見えにくい「個人」と「国家」の関係。しかし特に2011年の東日本大震災以降、今まで政治に興味がなかった人も、日本という国の選択が「自分事」に近づいてきているような感覚、味わっている人も多いのでは? そしてそんな日本が様々な国際情勢に参加せざるをえない時、私達が目指す未来とは?戦後70周年を契機に、国と自分との理想的な関係について考えるきっかけにしたい。

今月のオススメ

第4回死刑映画週間「人は人を裁けるのか」

画像
『BOX袴田事件 命とは』2010年/日本/117分/配給:スローラーナー
タイトル
第4回死刑映画週間「人は人を裁けるのか」
上映場所
渋谷ユーロスペース
上映期間
2015年2月14日(土)〜2月20日(金)
上映時間
上映スケジュールの詳細は劇場まで
上映作品
『死神博士の栄光と没落』『ゼウスの法廷』『私は貝になりたい』『軍旗はためく下に』『北朝鮮強制収容所に生まれて』『BOX袴田事件 命とは』『天国の駅 HEAVEN STATION』『証人の椅子』

  
ユーロスペースでは2月14日から、冤罪死刑事件「袴田事件」を死刑を宣告した裁判官の視点で描いた「BOX袴田事件 命とは」など、「人を裁くこと」をテーマに選んだ映画8本を特集する第4回死刑映画週間がスタートする。
主催は弁護士や宗教関係者など約5000人が賛同し、死刑廃止を求める「フォーラム'90」。これまで、罪を償い再生する道と罪を赦す心についての特集や、死刑制度を維持する「国家」について着目した特集などを実施。幅広い映画作品から、「死刑制度」について考える場を設けてきた。
「人は人を裁けるのか」という今回のテーマは、死刑囚だった袴田巌さんが無罪確定となり48年ぶりに釈放されたことなどを例に、論理と倫理を欠いた人びとが「人を裁いている」現実にフォーカスしたもの。これを扱った「BOX袴田事件 命とは」のほかにも、かつての婚約者同志が裁判官と被告という場に立つ裁判を描いた「ゼウスの法廷」(2013年、日本、136分)や、1953年に実際に起こった冤罪事件「徳島ラジオ商殺し事件」をモデルにした「証人の椅子」(1965年、103分)、北朝鮮の強制収容所で政治犯の息子として成長し、奇跡的に脱北に成功した青年のドキュメンタリー「北朝鮮強制収容所に生まれて」(2012年、104分)など8作品がプログラム制で上映される。
期間中には、冤罪死刑囚の袴田さん、映画評論家の柳下毅一郎さん、ジャーナリストの青木理さんなどを招いたトークも展開する予定。死刑反対派も、賛成派も、それぞれを思い直すきっかけにしてみては?

SHOAH ショア(クロード・ランズマン監督3作品)

画像
『SHOAH ショア』1985年/フランス/567分/©Les Films Aleph
タイトル
SHOAH ショア(クロード・ランズマン監督3作品)
上映場所
渋谷イメージフォーラム
上映期間
2015年2月14日(土)〜3月6日(金)
上映時間
上映スケジュールの詳細は劇場まで
監  督
クロード・ランズマン
上映作品
『SHOAH ショア』『ソビブル、1943年10月14日午後4時』『不正義の果て』

  
渋谷イメージフォーラムでは2月14日から、第二次大戦中に実行されたユダヤ人の強制収容を扱った全篇9時間27分のドキュメンタリー「SHOAH(ショア)」など、クロード・ランズマン監督3作品を上映する。
ランズマン監督は1925年フランス・パリ生まれ。高校生だった第二次世界大戦中は、ナチス侵攻に抗してレジスタンス活動に参加。戦後はサルトルやボーヴォワールと親交を深めてジャーナリストとして活躍し、1985年に「SHOAH」を発表。全米の思想界に衝撃を与えた。以降現在までドキュメンタリー作家として、ナチス・ドイツによるホロコースト(大量虐殺)の真実を追求し続けている。
戦後70年を迎えるにあたって、現在では日本版DVDが絶版となり“幻の傑作”となった「SHOAH」を公開する今回。同作ではランズマン監督がナチスの収容所から生還したユダヤ人、収容所の元ナチス親衛隊員、収容所の近くに住むポーランド人農夫などの膨大な証言者を訪ね、567分の本編を第四部で紹介。過去の記録映像や感傷的な音楽を一切排除した芸術性溢れる作品として高い評価を得ている。ほかにも収容所でのユダヤ人による武装蜂起の計画と挫折を伝える「ゾビブル、1943年10月14日午後4時」、最新作「不正義の果て」も合わせて上映する。
戦後70年を迎え、ホロコーストの「記憶」を風化させないよう、しっかりと心に刻みたい。

SAYAMA みえない手錠をはずすまで

2013年/日本/105分
タイトル
SAYAMA みえない手錠をはずすまで
上映場所
渋谷アップリンク
上映期間
2015年2月21日(土)〜3月6日(金)
上映時間
上映スケジュールの詳細は劇場まで
監  督
金聖雄
出  演
石川一雄、石川早智子

アップリンクでは2月21日から、32年間の服役生活の後、仮出所から19年が経った現在もなお無実を訴え続ける石川一雄さんを追ったドキュメンタリーで、2014年度の毎日映画コンクール「ドキュメンタリー映画賞」を受賞した「SAYAMA みえない手錠をはずすまで」が公開予定。
石川さんは1963年5月、当時24歳で、埼玉県狭山市で発生した女子高生を被害者とする強盗強姦殺人事件の加害者として逮捕。一審では罪を認め死刑判決を受けるも、その後一転して冤罪を主張。無期懲役が確定して服役し、1994年に仮釈放された。
「冤罪被害」「被差別部落」など、さまざまな社会問題をはらんだ狭山事件の渦中の人物を追った同作は、しかしそういった問題に焦点をあてた構成にはなっていない。そうではなく、「どうきりとっても"無実"としか思えない」(金監督)石川さんを主人公に、殺人犯というレッテルを貼られてもなお「幸せそう」だという石川さんの日々の暮らしを追う。
50年間「殺人犯」というレッテルを背負いながら、苦難の連続である日常を泣き笑い怒り、まっすぐに生き抜く石川さんの生き方に、「幸せとか」「愛とは」「友情とは」「正義とは」様々な問いへの答えを探してみたい。

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