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独断と偏見で「2021年の渋谷」を振り返る

コロナ禍生活も2年目、マスク着用やリモートワークはごく当たり前のものとなり、すっかり生活に定着した一年となった、コロナ終息後にマスクを外して外出するのが、むしろ恥ずかしく感じるに違いない。1年延期となった東京オリパラも無観客ながら無事に終わり、ワクチン接種でコロナ感染者数も大幅に減少し、変異種の不安は依然残るものの、渋谷の街にも人の賑わいがようやく戻りつつある。コロナと共存しながらも、世の中が動き始めた2021年を改めて振り返ってみたいと思う。では早速、「2021年の渋谷」の大きなトピックをニュースランキング形式で見ていきましょう。

<独断と偏見で選ぶ!2021年、渋谷ニュースランキング>
1位:東急百貨店本店、2023年1月で営業終了を発表
2位:東急ハンズ、来年3月にカインズ傘下へ
3位:宮下公園に「ドラえもん」モニュメント設置
4位:57年ぶり、東京オリンピックパラリンピックが再び渋谷に
5位:JR山手線、渋谷駅の内回りホームが最大5.1メートル拡幅
6位:「北谷公園がPark-PFIでリニューアル、2024年に「代々木公園」も
7位:しぶちか&東急フードショーがリニューアルオープン
8位:ふれあい植物センター休館、2023年にリニューアルオープン
9位:ミニシアターをけん引した「アップリンク渋谷」 26年の歴史に幕 
10位:ヒカリエデッキ供用開始、将来的に渋谷の東西を空中でつなぐ「スカイウェイ」へ

1.東急百貨店本店、2023年1月で営業終了を発表

堂々の1位は「東急百貨店本店、2023年1月で営業終了を発表」のニュース。昨年春、渋谷駅と一体化する商業施設「東急百貨店東横店」が85年の歴史に幕を下ろしたが、それに続いて「東急百貨店本店」も2023年1月で営業終了することが発表された。
東急本店は1967(昭和42)年、旧渋谷区大向小学校跡地にオープン。その後、1989(平成元)年に企業メセナ活動の一環として、隣接する駐車場スペースに「Bunkamura」がオープンし、文化施設と一体化する百貨店として長く親しまれてきた。 開業から半世紀以上を経て、建物の老朽化が進む中で、今回の再開発計画が発表される形となった。2023年1月に閉店後は、LVMHグループが設立した不動産開発投資会社と東急グループがパートナーを組み、大規模再開発「道玄坂二丁目24番地土地開発計画」が始動する。
同時にBunkamuaも2023年4月から長期休館し、再開発工事と同時並行で大規模改修が行われるという。コロナやライフスタイルの変化も影響し、百貨店業界全体が苦戦を強いられているが、数年後、東急百貨店はどんな形で生まれ変わるのだろうか。文化発信地としての機能を保ちながら、新たな渋谷の顔として復活してくれることを期待して待ちたい。

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2.東急ハンズ、来年3月にカインズ傘下へ

つい先日、メディア各社が一斉に報じた大ニュースが「東急ハンズ買収」である。
来年3月、東急不動産ホールディングス連結子会社である「東急ハンズ」の全株式を、ホームセンター大手のカインズ(埼玉県本庄市)に全て売却することを明らかとした。
▲1976年、一号店の藤沢店オープン時の写真

1976(昭和51)年に1号店を藤沢にオープン。その後、1978(昭和53)年に旗艦店となる渋谷店を宇田川町にオープンする。「ハンズに行けば、ない商品はない」と言われるほど、各フロアには売れ線のみならず、バリエーションに富んだ商品がそろい、見ているだけで楽しいショップとして一躍注目を浴びる。
▲傾斜した坂に立つ「東急ハンズ渋谷店」

商品点数だけではなく、渋谷店ならでの魅力も忘れてはならない。それが、浜野安宏氏さんがプロデュースした「スキップフロア」だ。オルガン坂の傾斜に立地する渋谷店は、敷地も狭く商業施設向きの土地ではなかったが、この傾斜地を巧みに利用し、傾斜の高さに合わせて「A」「B」「C」とフロア高さの異なる3つの出入り口を設置。アルファベットで半階ずつフロア高さがズレていて、ワンフロアにワンカテゴリーの商品群が並び、かつてない回遊性と遊び心に富んだ商業施設が生まれる。初めて訪れた時に迷子になった人もきっと多かったに違いない。「ハンズ=渋谷」と言われる所以は、そんなスキップフロアがもたらしていた部分もあるだろう。

さて、今回の買収の一番の理由は「コロナ」である。コロナ以前までハンズは約1000億に届く売上高を上げていたが、都市部中心に展開する店舗が多く、コロナ禍の緊急事態宣言に伴う臨時休業や時短営業、インバウンド需要の大幅な減少が大きな打撃を与え、2021年3月期の売上は631億円まで落ち込む。一方で郊外中心に店舗を構えるカインズは、2021年2月期の売上高を4854億円(前年比444億円増)とし、ホームセンター業界でトップの売上を誇る。まさにコロナで明暗を分けた2社といえる。来年4月以降、東急ハンズ渋谷店がどう変わるのか、注目していきたい。

3.宮下公園に「ドラえもん」モニュメント設置
6.「北谷公園がPark-PFIでリニューアル、2024年に「代々木公園」も

藤子・F・不二雄の人気キャラクターで構成するモニュメント「ドラえもん みらいのとびら」が12月1日、渋谷区立宮下公園に登場。1970(昭和45)年に連載を開始した漫画「ドラえもん」が、昨年50周年を迎えたのを記念して約2年かけて制作された同モニュメント。藤子・F・不二雄の誕生日である同日、世界中から幅広い世代の人たちが集まる「国際都市・渋谷」に寄贈され、区は宮下公園に設置することに決めたという。
▲2021年12月1日、宮下公園で開催された除幕セレモニーの様子

高さ3.921メートルのブロンズ製の「ドラえもん」のほか、昼寝をしている「のび太」、オバQの「O次郎」、「パーマン」、キテレツ大百科の「コロ助」、21エモンの「ゴンスケ」など人気キャラクター11体と、「どこでもドア」「ビッグライト」などのひみつ道具で構成される。渋谷といえば「忠犬ハチ公像」に代表される「イヌ」のイメージが今まで強かったが、今後はドラえもん像の「ネコ」のイメージも定着していくのか……。

公園といえば、今年は「Park-PFI」の話題が目立った。Park-PFIというのは、公園利用者の利便性を向上させる飲食店や売店などの公園施設の設置と、その施設から生じる収益を活用して、公園設備、改修等を行う者を公募で選定することができる「公募設置管理制度」のこと。2017年に都市公園法が改正され、新たに設けられた制度で、渋谷区が初めてこの制度を利用したのが「北谷公園」である。
▲Park-PFI制度活用で生まれ変わった「北谷公園」

これまで神南にある北谷公園は都市公園のため、子どもの遊び場としての側面はなく、かつ老朽化が進み公園としての魅力も全くなかった。かといって、区が予算をつぎ込み、公園をリニューアルしたところで、そう魅力的なスぺ―スに変わるとは思えない。そこで区はPark-PFI制度を活用し、プロポーザルで公園整備運営事業者を募集し、民間企業に運営を任せることにしたのだ。 新しい公園内には「BLUE BOTTLE COFFEE(ブルーボトルコーヒー)」を誘致し、さらに今後、地域のお祭りやマルシェなど様々なイベントや企画を同スペースで実施していくという。今まで殺風景で上手く活用できていなかった公園が、民間企業のアイデアと行動力が加わることで生き返った成功事例といえる。

もう一つ、都初のPark-PFI制度の活用が、東京オリパラ終了後に発表された。現在、開園する代々木公園から国立代々木競技場を挟んで南東側のエリア(岸記念体育会館跡地、都水道局ポンプ所)を新たに整備し、公園を拡張する計画が明らかとなった。
▲かつて「岸記念体育館」があった場所に新たに公園が整備される(撮影=2019年7月)

北側(岸記念体育館跡)の区域を「みどりと集いのゾーン」、南側(都水道局ポンプ所)の区域を「雑木林とヒーリングガーデンのゾーン」と位置づけ、2つのゾーンを一体的に利用できるように「回遊性が高い空間」にするとともに、現在の代々木公園A地区・B地区の森林公園としての連続性にも配慮し「緑化」を行う。北側(岸記念体育館跡)の「みどりと集いのゾーン」の整備・管理運営に関しては、都として初めてPark-PFI制度を活用し、都の負担を軽減しながら公園の拡張に取り組むという。
▲岸記念体育館跡地に代々木公園が拡張・整備される。完成パースイメージ

面積4,182平方メートルの園内には、スケートボードを楽しめる「アーバンスポーツパーク」や、ヨガなどが行える「多世代健康増進スタジオ」、飲食可能な「フードホール」、さらに公園中央にはイベントなどを催す「発信テラス」や、人々が集う「にぎわい広場」などが設けられる。公園の供用開始は2024年3月の予定。

ここ数年、「渋谷=再開発のまち」というイメージが強いが、大型の商業施設と同時に人が憩う場である「公園」の見直しを図っていくことは、渋谷で暮らす人、働く人たちにとってはとても大事なことだ。特にコロナ禍においては、野外で気持ちよく過ごせる公園の存在意義を改めて認識した人も多かったに違いない。

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4.57年ぶり、東京オリンピックパラリンピックが再び渋谷に

1964年大会では「代々木公園」が選手村として活用されたほか、「旧渋谷公会堂」が重量挙げ、代々木競技場の「第一体育館」が競泳、「第二体育館」がバスケットボール競技で使われるなど、渋谷は五輪の中心地であった。
▲7月23日の開会式当日、都心上空をブルーインパルスの展示飛行の様子。開会を祝い大きな五輪のマークを青空に描いた。

あれから57年の歳月を経て、今回の五輪でも代々木競技場は「ハンドボール(オリンピック)」「バトミントン(パラリンピック)」「ウィルチェアーラグビー(パラリンピック)」の会場として再び利用。残念ながらコロナ禍で無観客となったが、2大会の実績を持つ同競技場は、まさに「レジェンド」の名にふさわしい。
▲2度のオリパラ実績を持つレジェンド会場「代々木競技場」

「50mプール、飛び込み台を備え、15,000人を収容できる建物」を実現するため、当時、建築家・丹下健三氏は2本の柱にワイヤーロープをかけた「高張力による吊り屋根」のアイデアを考案する。それまで世界に類例のない競技場建設に向けて、日本の技術力の全てを結集し完成にこぎ着けたのが、今の残る代々木競技場である。今年、第一体育館と第二体育館は、日本を代表する名建築として国の重要文化財に指定された。今後、建築関係者らを中心に「世界遺産登録」へ向けた活動も進めていくという。

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5.JR山手線、渋谷駅の内回りホームが最大5.1メートル拡幅
10.ヒカリエデッキ供用開始、将来的に渋谷の東西を空中でつなぐ「スカイウェイ」へ

JR山手線渋谷駅の大崎・恵比寿方面ホーム(内回り)の幅員が最大5.1メートル広がり、10月25日初電から供用を開始した。
▲JR山手線渋谷駅内回りホーム。幅員が最大5.1メートル拡張され、広々と感じる。

JR渋谷駅は、2019年から全5ステップで大幅な改良工事が進められている。2020年6月に第2ステップとして、渋谷駅中央から新南口まで約350メートル南側に離れていた埼京線・湘南新宿ラインのホームを、山手線と並列化する大規模な工事が終了。そして今回、10月22日終電後から25日初電まで、JR東日本としては初めて山手線内回りを完全に運休し、第3ステップとなる山手線内回り線路切換工事(ホーム拡幅)が実施された。
▲渋谷駅線路内の工事の様子。

工事2日間に動員された作業員は計3300人。埼京線及び山手線外回りの運行を止めずに実施されたため、大きな重機は使えず、一度にかかわる作業員は最大約800人に達し、架線や支持物の撤去、線路撤去や移動、ホーム諸施設の改修まで「人の力」が主役となる切換工事であった。次回の第4ステップ工事では、もう一方の「外回り」の線路を西側(桜丘方面)に移動しホームを拡幅して、内回り・外回りが一体化する「島式ホーム」が新たに生まれる予定だ。工事時期は今のところ未定。

▲渋谷ヒカリエ北側、銀座線の直上にヒカリエデッキがオープンした。

同じく鉄道関連のニュースでは、渋谷ヒカリエの北側、東京メトロ銀座線の直上スペース(屋根部分)に7月15日、新しい歩行者デッキ「渋谷ヒカリエ ヒカリエデッキ」がオープンした。 渋谷ヒカリエ3・4階に接し、隣接する宮益坂と並行して整備された同デッキ。渋谷ヒカリエに接続する東京メトロ銀座線や、地下3階にある東急東横線・渋谷駅改札口から宮益坂上までスムーズな移動が可能となり、渋谷駅東口エリアの回遊性や利便性向上が見込まれる。
▲ヒカリエデッキと渋谷ヒカリエ4階アーバン・コアの接続部に「渋谷のラジオ」のサテライトスタジオがオープンした。

また、ヒカリエデッキと渋谷ヒカリエが接続する4階アーバン・コアのスペースには、コミュニティFM「渋谷のラジオ」がサテライトスタジオを新たに設け、新デッキの賑わいづくりに一役買っている。
▲2027年までに渋谷ヒカリエから渋谷マークシティまで、空中通路「スカイウェイ(仮)」が開通する。

現在、ヒカリエデッキは渋谷ヒカリエ止まりで、明治通りを越えた先には進めないが、将来的には銀座線渋谷駅の直上が空中通路「スカイウェイ(仮)」となり、ヒカリエデッキから渋谷スクランブルスクエアや渋谷マークシティまで空中通路を歩いて移動できるという。 底地形の真ん中にある渋谷駅の周囲には、道玄坂、宮益坂など坂があり、歩行者にとってはアップダウンの多い歩きにくい地形であるが、スカイデッキの整備でこうしたまちの課題が克服される。今回のヒカリエデッキのオープンは、その壮大な計画の始まりである。

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7.しぶちか&東急フードショーがリニューアルオープン

戦後ヤミ市の面影を残す渋谷地下商店街「しぶちかショッピングロード(しぶちか)」は2020年9月、63年の歴史に一旦幕を下ろした。その後、約10カ月にわたる大規模なリニューアル工事を経て、今年7月に装いを新たに再オープンした。
▲約10カ月間のリニューアル工事を経て、生まれ変わった「しぶちか」がオープン。

従来の「しぶちか」は洋品や雑貨店中心であったが、今回のリニューアルに伴い、「ビアードパパ」「おむすび権米衛」「ステラおばさんのクッキー」などテイクアウトを中心とした食物販が新たに加わった。
▲渋谷マークシティ1階にオープンした東急フードショー「スイーツゾーン」。

さらに「しぶちか」オープンとタイミングを合わせて、東急フードショーも渋谷マークシティに「生鮮・グローサリーゾーン」「スイーツゾーン」、しぶちかに隣接する渋谷地下街に「デリゾーン」を新規オープンさせた。ここ数年、渋谷駅周辺には渋谷ヒカリエ地下2階・地下3階に「東横のれん街」、渋谷スクランブルスクエア東棟1階に「ecute エディション渋谷」、1階・地下2階に「東急フードショーエッジ」など、デパ地下型の食品フロアが急増している。今回、新たに加わった「しぶちか」「東急フードショー」と合わせて、250店舗を超える食物販が集積し、渋谷駅と一体化する商業施設地下から低層部は「食の一大マーケット」を築きつつある。

コロナ禍における巣ごもり需要で弁当や総菜など「中食」人気が高まる中、通勤や電車の乗り換えの合間にサクッと買える「駅近の食品フロア」の拡充は、ユーザー側からしても大変利便性の高い変化といえるだろう。

<関連記事>
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8.ふれあい植物センター休館、2023年にリニューアルオープン

「日本一小さな植物園」と銘打って営業してきた渋谷区ふれあい植物センターが12月28日で長期休園に入った。
▲渋谷区ふれあい植物センターの外観

2005(平成17)年、渋谷清掃工場の電気を使う還元施設として開園。地上4階建てで延べ床面積は773.39平方メートル。1〜2階の吹き抜けは温室で、熱帯植物を中心に約500種類の植物を育てている。そのほか、企画展示を行うホールや、多目的ホールも併設し、季節に合わせた様々なイベントも行ってきた。中でもホタル観賞会などは人気企画であったが、この2年間は新型コロナの影響で休館や企画中止を余儀なくされ、思うような運営が出来ていなかったという。
▲ふれあい植物センター温室の様子。年間を通して約500種類の植物を育てていた。

リニューアル後は「農と食の発信拠点」をテーマとし、植物の展示や水耕栽培による野菜の栽培、ワークショップ、料理教室などのほか、カフェレストランも併設するという。来年6月ごろから改修工事が始まり、2023年6月ごろにリニューアルオープンする予定。

9.ミニシアターをけん引した「アップリンク渋谷」 26年の歴史に幕

渋谷のミニシアターを長らくけん引してきた「アップリンク渋谷」が5月20日で閉館し、26年の歴史に幕を下ろした。「設備や機材の老朽化による再投資を考えなければならない時期にコロナ禍に襲われ、経営が立ち行かなくなった」というのが理由だ。
▲アップリンク渋谷の入口付近

1995(平成7)年、渋谷・神南にイベントスペース「アップリンク・ファクトリー」を開業。2004(平成16)年、宇田川町に移転し、「日本一小さな映画館」のキャッチフレーズで「アップリンクX」をスタートする。その後、スクリーン数を3つに拡大し、ギャラリーやマーケット、カフェレストランを併設する「アップリンク渋谷」が誕生する。
▲2021年5月20日、アップリンク渋谷の最終上映に訪れた映画ファン。

作家性の強い作品をそろえたプログラムの上映で独自色を打ち出したほか、配給や映画製作にも力を注いだ。中でも2011年、震災間もない4月2日に放射性廃棄物の処理を描いた映画「100,000年後の安全」を公開し、社会問題やメッセージ性の強いドキュメンタリーも臆することなく取り扱い、話題を呼んだ。かつて「ミニシアターの街」として知られた渋谷であるが、個性の強い老舗映画館が徐々に姿を消し、映画ファンにとって寂しい限りだ。

コロナ2年目を迎え、東急ハンズの買収やアップリンク渋谷の閉館など、ボディブローのごとくじわじわとその影響が出始めている。一方で、バーチャル渋谷などに代表されるメタバースや、西武渋谷店パーキング館にオープンした「CHOOSEBASE SHIBUYA」、宮益坂下にオープンした「b8ta(ベータ)Tokyo-Shibuya」、しぶちかにオープンした「AZLM CONNECTED CAFÉ」など、「売らない店舗」を掲げる体験型ストアの出店が相次ぎ、ECと連動する「次世代型の新しい小売店」の在り方も話題となった。もはや大きなバックヤードや在庫を持って、商売する時代ではなくなりつつあるのだろう。渋谷は、こうした時代の流れをいち早くキャッチできる場所でもある。コロナを契機に小売店が集積する渋谷の街が、今後どう変わっていくのか、来年以降も注意深くウォッチしていきたい。

<過去の関連記事>
・「独断と偏見で「2020年の渋谷」を振り返る」(2020年12月30日)
・「独断と偏見で「2019年の渋谷」を振り返る」(2020年1月4日)
・「独断と偏見で「2018年の渋谷」を振り返る」(2019年1月7日)
・「独断と偏見で「2017年の渋谷」を振り返る」(2018年1月9日)
・「独断と偏見で「2016年の渋谷」を振り返る」(2017年1月11日)
・「独断と偏見で「2015年の渋谷」を振り返る」(2016年1月3日)
・「独断と偏見で「2014年の渋谷」を振り返る」(2015年1月3日)
・「独断と偏見で「2011年の渋谷」を振り返る」(2011年12月31日)
・「独断と偏見で「2010年の渋谷」を振り返る」(2011年1月7日)
・「ゆく渋谷ゼロ年代、くる渋谷10年代」(2009年12月29日)

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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